とりわけ酷い状態なのがガソリンタンクです。
ガソリンが腐って、そりゃあもう凄いことになっておりまして。
今回はタンク自体とコックなどの周辺機器の現状把握と考察をしつつ、対応策を検討するという記事です。
当記事の目次
レストアでは見たくもない現状を把握せねばならない
部位や場所、システムごとに適切な清掃や洗浄を行います。
そのためには「現状把握。」が必要なのです。
当倶楽部に来たVT250Fは、ほんっとにボロイです。
ただただ、ひたすら洗浄、清掃を行う日々が続きました。
現状把握をするためにも清掃はレストアの最初のステップです。
これも、
一度で綺麗にできなければ、二度三度洗うこともありますし、部分的に外して洗浄したりもします。
レストアの作業は清掃に始まり清掃に終わるのですよ。
清掃も徹底的にやると時間がかかるのです。
当倶楽部のVT250Fの場合、
なのですが、
です。
※どういう保管をしたらこうなるのか、ホントに不思議。エンジンやフォークのボトムケース等の塗装の痛み方は今まで見たことないです。
なかでも、
は、今まで見たことないレベルでダメです。
そのどちらもちょっと見た感じでは、まともに動く気配すらありません。
ブレーキはピストンが行ったきり戻らない。
※つまりブレーキがかかったままになる。
ガソリンタンクは給油口から見る限り目も当てられないくらい錆びて異臭がする。
※このままガソリン入れるとトラブル多発間違いなし。というかそんな勇気はありません。
どちらも 命に係わる箇所ですので 心してかからねば一生懸命清掃することにします。
そして、
どちらも局部的に何とかすればいいってもんじゃなく、そのシステム全体を把握して適切な対応が必要なのです。
ということは。
作業的に 作業の難易度はそれほど高くないにせよ かなり時間を取られるということなのですよ。
経験上、ガソリンタンクからキャブまでのエンリッチャー系の作業は一日で終わりませんな。
一見良さそうなのだが内部はひどい。
とはいえ、
特にガソリンタンクの錆び取りなどは、寒い時期にやったほうが効率がよろしいのです。
タンクの内側は水洗いして脱脂して乾かしている間にも錆びるのです。
気温と湿度が高いと鉄の酸化反応が早くなるのでさびを呼ぶことは想像に難くないのです。
腐ったガソリンの臭気はすさまじい
腐ったガソリンの匂いはすさまじく、周辺の住民から異臭で苦情が来るレベルです。
腐ったガソリンの臭気はすさまじく、生半可な覚悟で対応はできません。
とにかく速攻でタンクの内部を洗浄して臭気を飛ばさねばなりません。
※ご近所からの苦情が怖いので勢い気弱になっています。
そうはいっても、
いつまでも匂いにやられてはいられません。
ガソリンタンク周辺の現状把握をしつつ、次の作業の作戦を練らなければいつまでたっても先に進みません。
とはいえ、
現状確認を始めると次々と襲い来る劣化の嵐。
久々にこんな状態のバイク見た。
※普通の人は捨てるレベル。
こういう個所もいちいち洗浄、調整していきます。
腐ったガソリンの匂いなんてほんとに久々。
手に付いたり服に付いたりすると落ちないんだよねえ、この匂い。
「腐ったガソリンの匂いを嗅ぐとやる気が出る。」
という「レストア濃厚民族。」も日本には多数生息しているようですが、ワタクシは楽して生きていきたいのです。
※幸せになりたい。楽して生きてたい。というチェーンソーマンのオープニングの歌詞にシンパシーです。
でも、手に入れちゃったものはしょうがない。
バイクの形があるのだからワタクシが動くようにしてやるのです。
※そういう意味では、このVT250FHは運がいい。
ちなみに・・
80年代前半には既に登場していた「エアプレーンタイプのフラットなタンクキャップ。」を装備したバイクのタンクというのは、思いのほか複雑な形状をしています。
それ以前の「ただのヤカンみたいな一重構造のタンク。」とは全く違う構造をしています。
※Z1-RもZ750D1も多段のヤカンです。シンプルで好き♪
タンクはボルト止めですらないのが当時のKawasakiのバイク。
エアプレーンタイプのタンクは、デザイン上はタンクの上がフラットでかっこいいのですがキャップ周りが凝った作りなのです。
それ以前の単純なガソリンタンクと比べるとはるかに複雑なのですよ。
※内部に配管があってタンク下部迄つながってたりする。
これらはバイクブーム時に ユーザーの使い勝手が良いようにメーカーが気を利かせた結果、 爆発的に進化した機構です。
格好はいいのですが、
この構造では「タンクを逆さにしてもタンクの内容物を完全に取りだせない。」のです。
※タンクキャップの裏側付近に溜まるだけ溜まって、外部に排出されないためです。
さらに、
タンクをツインチューブフレームの上に載せる形状なのに、少しでも多く容量を稼ぐため最下部が張り出しているというデザインです。
左右の張り出しの底部なんて おそらく錆だらけですが 見えないのでどうなってるのかすらわかりません。
このような形状のタンクは、とにかく錆が取りずらいのです。
※ヤカンの様なZ1系のタンクのなんと楽なことか。
そもそも、
逆さにしても内容物が完全に出てこないため、内部の水分を完全に抜くのも面倒です。
当倶楽部に来たVT250FHのタンクはなぜかガソリンコック部から完全に液体が抜けないのですよ。
もしかして仕様?
※その状態で丸一日程度の乾燥では内部の水分が抜けきりませんでしたし。
このころのバイクのタンクは「一度錆びると交換が前提。」と言った設計思想なのでしょうねえ。
それが理由かどうかはわかりませんが、この複雑な構造のタンクがパーツリストを見ると当時は25800円という破格値段です。
今なら借金してでも新品買うわ。
景気がいい時代とはこういうものなのですなぁ。
※遠い目。
ともあれ、
80年代のバイクは消耗品であるタンクがメーカー欠品なのは当たり前です。
中古のまともなタンクですらなかなか手に入らないという致命的な問題があるので維持はむつかしいですよ。
※「タンクがない=走れない。」ということですよ。
仮説1:もしかして既にコーティングしてある?
給油口周りの色が違うし。
匂いを我慢しながら給油口から見える箇所をこすってみると、下地が見える。
擦ってみたら下地は結構しっかりしてたりして。
普通ならこのレベルのさびたタンクなら錆の層になってるはずなのですが、少なくともこの箇所は錆びてない・・。
どうやら前のオーナーかその前のオーナーかは知りませんが、
歴代のオーナー氏の誰かがタンク内部のコーティングをしたっぽいです。
では、タンク内部のこの茶色い汚れは何だ?
確実に錆びた鉄粉が混じってるし。
目に見える範囲はコーティングがされている・・。
ように見えるけれど、タンクキャップ周辺の複雑な構造になってる辺りはコーティングされておらず、錆まくっている・・。
もしかして、昔のタンクコーティング剤で ド素人が適当に施工したため タンク内のコーティングに失敗した個体か?
※後にこの仮説が当たってたことが判明。すげえぜ。お楽しみに♪
ちなみに・・
古いバイクレストアラーはタンク内コーティングというと渋い顔する人が多いです。
確かに昔 つっても30年位前 のタンクコーティング剤は割と適当なものが多く、
コーティングした樹脂が剥がれて錆並みの悪さをするという商品も確かにありました。
ですが、
時は21世紀に入って20年も過ぎました。
今の世の中、もう何でもかんでも樹脂です。
樹脂の性能は飛躍的に上がっています。
新品のタンクが手に入るならコーティングなんてしなくてもいいですが、
そうでないタンクが錆びたバイクのレストアなら大人しくタンク内はコーティングした方が手っ取り早いです。
バイクは「タンクがない=走れない。」ということなので、背に腹は代えられません。
※中古のタンク探したって同年代のタンクですよ。程度も同じくらいと思った方が失敗がないです。
当ブログでも何度も書いていますが、PORのタンクシーラー(コーティング剤)は素晴らしいです。
とにかく慎重に丁寧にやれば素人でもコーティングの失敗はほぼないし、コーティングされる樹脂は圧倒的な強度を誇ります。
※できれば錆び取りと金属表面安定化剤とタンクシーラーのセットで買うことをおススメします。
今回VT250FにはPORのタンクシーラー単体を使いました。
上記リンクで探せます。
錆取り剤は某一流有名輸入工具店スト〇ートの「無公害高速錆除去剤 RSR-2。」という液体を使いました。
「無公害高速錆除去剤 RSR-2。」を使ったレポートは次回以降に書きます。
これはこれで割高ですが威力が凄い。
こんな記事もあります▼
仮説2:シリンダーからの負圧が無ければコックからガソリンが落ちない?
キャブからの負圧が無ければガソリンタンクからガソリンが流れないという親切設計です。
負圧を巧みに利用
VT250Fシリーズは ライバルのRZ250が簡単な構造だったのと対照的に 複雑な構造です。
シリンダーの負圧を拾って、ガソリンコックのダイアフラムを作動させ、ガソリンの供給を行うシステムです。
キャブのインテークマニフォールドから細いゴムパイプがガソリンコック迄伸びています。
※当時から、このゴム管が折れたり、曲がったり、穴が開いたりしたらガソリン供給されなくなるのでトラブルがあったんじゃないかと思ったりします。
シリンダーの負圧を拾って利用するといえば古い車のブレーキサーボですかねえ。
まあ当倶楽部のVT250はこの機構がほぼ死んで、キャブ迄ガソリンが流れっぱなしだったようで、
※フェイルセーフならガソリンが流れない方向になるハズなのに。なんでだろ。
おかげでキャブは詰まりっぱなしで、早々に中古品の利用を決めましたよ、ええ。
※埼玉のMさんありがとう♪またなんか頼むかも!
VT250シリーズのキャブをメンテナンスする場合、
エアクリーナーボックスとファンネルを取る
までやらないとキャブに到達できません。
※すげえ面倒くさい作りですが、当時のHONDAは ワタクシが嫌う最近のダメになったHONDAと違い 凝った設計をする素敵なメーカーだったのです。
こういうことを鑑みたら、
エンジンがかかってない時は余計なガソリンをキャブに供給しないというのは親切設計かもしれませんな。
※当時のHONDAにはこういう気概があったんですよねえ。
ガソリンコックのストレーナーはすでに死んでいた
ガソリンコックの話もしておきましょう。
ガソリン経路の現状確認というのはガソリンタンク以外も含むのです。
ガソリンコックは大きいボルトでタンクに取り付けられています。
この構造自体は古くからある形式ですな。
※次第に、タンク側の取り付け部がフラットになって、パッキンを挟んでボルト止めする構造になっていくのですが。
当倶楽部に来た当時は、ここから腐ったガソリンがぽたぽた垂れて異臭を放っていました。
このバイクの売り手が適当にコックを外そうとしたようですが失敗して元に戻らなかったっぽい。
※このせいで配管のジョイントが粉砕していたわけです。
全く余計なことすんな、って感じです。
※恨んでも仕方ないですが、これ普通なら売り手は訴えられるレベルです。今のヤフオクでは個人売買のバイクはこういうことがあるのです。
ぽたぽた垂れた腐ったガソリンが、バイクの下の方(スプロケカバー周辺)の塗装を激しく痛めつけたようで、見るも無残な状態になっています。
※どれくらいの期間、腐ったガソリンに浸食され続けたんだか・・。
とりあえず、
見た目は走ることに関係ないので後回しにします。
走れるようになれば、見た目は少しずつリペアしていってもいいですし。
※でもどうやってリペアしようか、考えはじめると夜も眠れない。
さて、タンクから取り外したガソリンコックの内部は・・。
変質したガソリンで埋まりまくり(´;ω;`)
この詰まった茶色のグリス状の物体が腐ったガソリンです。
穴という穴がふさがって、タール状の変質ガソリンで埋め尽くされていました。
この変質ガソリンは、左ハンドルスイッチのレストアの記事で述べたグリスの変質よりもさらに酷い粘度を誇ります。
こんな記事もあります▼
分かってはいました。
まあこういうことであろうと。
腐ったガソリンの匂いがあった時点で8割がた諦めていたと言ってもいい。
ガソリンコックと一緒にタンク内に挿入されていたストレーナーは固着していて、撤去する際に千切れました。
※写真撮ったと思ったけれどなかった。こういう作業するときは手が汚いのでスマホ触りたくないのよ。
あああ。もういいよ。
ガソリン配管の途中にフィルター噛ませて気休めにするよ。
※何かの折にパーツで注文してもいいな。品番は16952-KV0-005です。当時価格は720円ですが約三倍を考えておいた方が良さそうだし。
細かいパーツはステンレストレーに展開するとなくさない。
激しくクヨクヨした後、
チマチマと分解して全ての変質ガソリンを撤去をすることにします。
変質ガソリンの撤去は、車のワイパーの芯材の鉄の棒とか精密ドライバーとかでゴム部を傷つけないように撤去していきます。
※真冬の小雪が舞ってるような日にやることではありません。鼻水が一瞬の躊躇もなく垂れていきます。
パーツクリーナーとエアコンプレッサーは大活躍ですな。
その作業中も腐ったガソリン臭がすごいので、ガソリンタンクのコックをつけるところには、ゴムホースとボルトを加工したもので栓をしておきます。
ちなみに・・
某有名一流ショッピングサイトには、VT250シリーズ用のガソリンコックが社外品で売られていたりします。
一通り作業が終わった後に見つけて「うわ。まじか。」と思ったのですが、後の祭りでドンヒャララ。
※変質ガソリン撤去に1時間以上かかって、身体に腐ったガソリン臭を纏ったワタクシが茫然。
これもリサーチ不足・・とも思いましたが、清水の舞台でカラオケ歌うくらいの度胸で購入してみました。
意外と安いのでありがたい。
こういうサードパーティが供給してくれる部品というのは結構あるのかもしれません。
※VTシリーズなんて10万台以上売れてるんだから、ある程度需要はある・・のかなぁ。
まとめ
もう後には戻れません。
とりあえず、
ガソリンタンク周りの現状確認はできたので次の工程として出来るだけ内部の洗浄をすることにします。
こうなったらセオリー通り水洗いだ。
真冬に作業するのは凄く嫌ですが ここをクリアしないとワタクシはこの先一歩も進めない大人になってしまう。
※何を言い出すんだ、ワタクシ。
とはいえ、
作戦が大事です。
タンク内に残っている腐ったガソリンがちゃぷちゃぷ言ってます。
どんな手法を使っても、タンク内の洗浄の際はこの腐ったガソリンの匂いが周囲にばらまかれるのは間違いないですし。
ゆえに、
風のある冬の晴れた日
に作業することにしました。
※暖かくなると匂いがさらに鬱陶しくなるし、風があれば匂いは拡散すると思うし。
長野の冬の水作業です。
凄まじく寒い予感がしますし、たぶんそれは間違っていません。
次はまとまった時間が取れ次第、タンクの洗浄作業の記事を書きます。
※エアプレーンタイプのキャップが付いたガソリンタンクは形状から内部のゴミや錆が抜けずらいため、タンク内部の洗浄作業が想像以上に難航することは想像に難くないのです。
ちなみに・・
実はVT250のレストア作業は2023/02/27現在、記事よりだいぶ進んでいます。
今のワタクシには レストア作業をする時間はあっても ブログ記事を書いている時間が取れません。
なので史実よりちょっと遅れて文章を書いています。
※何言ってんすか。いつも遅れ気味で記事書いてるので問題なんかないっすよ。ってだれか言って。
記事の更新も遅れ気味ですが、
その間もブログ読者の方々から色んな内容のメッセージをいただいており、ありがたいかぎりです。
※順次お返事書かせていただいています。返信遅れてスミマセン。もう少し待って。
ほんとはこういう素敵な定食屋さんの記事を書きたいのだが、後回しにしまくっています。
仕事の出張の旅費精算も遅くなって総務にすごく怒られているくらい忙しいのよ、年度末は。
※そんな無茶なスケジュールでワタクシが現地で仕事できると思ってるのか。この記事は新幹線内で下書きを書きました。
出張先での仕事?
そんなの適当でいいんですよ。
全部段取り終わってるので、ワタクシが行く必要は全くないんですが、相変わらず日本の企業は旧態依然としてますな。