キャブは人類が誇る残すべき遺産としてもいいくらいです。
低速域をつかさどるスロージェットがなぜ高速域での影響が少ないのか?
パイロットスクリューとは何なのか?
ちゃんと説明できる人います?
キャブとインジェクション
「やっぱりキャブじゃなきゃ!」という人はいまだに多いです。
それくらい奥が深いし面白い。
バイクには所有者自身が調整して自分のものにするという楽しみ方があるのです。
エンジンにガソリンと空気の混合気を届けているのが気化器です。
アナログ式はキャブ、デジタル式はインジェクションと呼ばれています。
キャブはシリンダーの吸気で混合気を作るのに対し、
インジェクターは混合気をエンジンに送り込むという違いがありますが、
ガソリンと空気を混ぜて送り込むのが気化器です。
混合気を
と思いましょう。
これらを気化器と言います。
そして。
気化器は消耗品なので、長く使ってると調子を崩すことがあります。
※インジェクションは知らんけど、キャブはたまに清掃した方がいいんだよ。
調子を崩した気化器では理想的に燃える混合気を作ることができません。
こうなると特に低速域に顕著に影響がでます。
※少ない混合気の方がごまかしがきかないからですね。
様々な不具合があり得ます。
調子を崩した場合、
インジェクションの場合は素人がどうこうできる部分はほぼありません。
壊れたらユニットごと交換となるのが普通ですが、
車種ごとに専用品なことが多く、代替部品はありません。
当然、非常に高価です。
それでも部品があるうちはまだマシなのですよ。
気化器のパーツが欠品=廃車のリスクが極めて高いのです。
デジタル化が進んだバイクや車は新しいうちは高性能ですが、
長い目で見たら維持に苦労することが少なくないのではないかと思っています。
※専用設計のインジェクションは長期的に考えるとパーツ難になりがちなので長く乗れない説に同調します。
キャブの場合、
素人でも清掃やパーツ交換でなんとかできる場合もあります。
最悪、他車種のキャブを流用するということもできないわけではありません。

たぶんゼファーX用のCVKキャブ。
400ccのキャブだけれど全体的にジェットもニードルも変更してるのでZ1-RでもZ750D1でも普通に使えています
。
当倶楽部でもZ1-RやZ750D1のキャブは他車のキャブを流用しています。
純正の強制開閉式は摩耗が進んでいたのか、どうやっても調子が悪く、最悪時のZ1-Rは8km/Lという極悪燃費でした。
キャブの他車流用をした場合、純正のセッティングデータがないのでユーザー自ら模索することになります。
4気筒車の4連キャブは取り外し自体が面倒だし、パーツも4つ分必要ですので泥沼にはまるんですよ。
大昔、ワタクシはセッティングに時間を割きましたが、今ではネットで情報交換できるのでだいぶ楽です。
※おかげで低速からスムーズなトルク感があって、燃費もツーリングでは20km/L走ることもあります♪
話がそれた。
キャブ車はオーナーが調整するのが基本です。
昔のバイクのマニュアルにはキャブの調整方法も記載されてましたし。
各ジェットの純正番手はもちろん、エアスクリューやパイロットスクリューの戻し回転数も記載されています。
※あくまで基準値なので使い倒した古いキャブでは信用ならんのですが、メーカーの初期設定値は超重要。
キャブ車にはこういう調整する楽しみがついてくるのですが、
面倒くさいので今どきのバイク乗りには嫌われる傾向にありますな。
ワタクシ的にはこの手の面倒くさいことに本当の楽しさがあると思うのですが、
世の中は簡単な方、楽な方、考えなくてもいい方に流れがちです。
※なんでも面倒くさいなら寝たきりになればいいんじゃなかろうか。実際、寝たきりになったら面倒なことがしたくなると思うけどね。
特に改造車や旧車と長く付き合うにはどうしてもキャブの知識が必要なので、
面倒くさいことを進んで楽しんでいかないといけません。
とはいえ。
キャブをいじるにはお金も時間もかかるし、基本的な知識をつけるための勉強が必要です。
調子を崩したキャブの性能を取り戻すには試行錯誤もしなければなりません。
ハードルは極めて高いので、安易におすすめはできません。
でも。
簡単にできないから男は燃えるんですよ♪
※ベストな状態を作れた時の爽快さったらないです。ニヤニヤします。
ちなみに・・
バイクのキャブはキャブ内部の開口部を広げて混合気を調整する可変ベンチュリタイプのものが多いです。
開口部の大きさを決めるバルブを直接ワイヤーなどで開閉するのが強制開閉式です。
バタフライバルブという負圧を調整する板をワイヤで開閉して負圧によって開口部をコントロールするバルブを開くのが負圧式です。
負圧キャブはワンアクション多いので「一瞬考えるキャブ。」とか悪口を言われますが、素人レベルでは全然気にならないくらいの完成度です。
※メンテナンスとセッティングが楽なだし、公道レベルなら性能的に全く痛痒なしなのもいい。
車のキャブに使われるウェーバーなどは固定ベンチュリで開口部が可変しません。
説明すると長くなるので割愛しますが、ワタクシはウェーバーの構造と仕組みを理解するためだけにウェーバーを一個買いました。
※ロータスヨーロッパは仕様によって固定ベンチュリ式と負圧式がありますが、当倶楽部のロータスヨーロッパはセッティングパーツが手に入りやすいウェーバー仕様に変更してあります。
極低速域の調整で必要なのは?
レーシングマシンなら高回転域から決めますが公道用なら多用する極低速域を決めた方が楽です。
一般に負圧キャブレーターのセッティングをする場合、
と分けて考えるのがセオリーです。
※極低速域のセッティング領域を持たないキャブもあるよ。
なぜか?
「エンジンの負圧の増減によって働くジェット というか穴 が違うから。」
です。
エンジンのピストンが下がるタイミングでシリンダーからの負圧がキャブにかかります。
シリンダーからの負圧で吸われる空気がキャブレーターの中を通ります。
エンジンの回転が速いほど負圧が高くなります。
負圧の大きさによってガソリンが吸いだされる場所が違うので、
セッティングする箇所が異なるというわけです。
大まかに
という理解です。
各回転域の際では複数のジェットが影響するのできっちり分けられないのですが、
おおむねこんなところです。
これが「基本のき。」です。
これを踏まえてセッティングを進めていくわけです。
エンジン回転数やタコメーターの動き、プラグの焼け具合などをヒントにしながら。
ちなみに・・
「本当に調子が悪い原因はキャブなのか?」
原因の特定と対処法の切り分けは非常に難しいのです。
極低速域が弱い場合、
などなど、キャブ以外にも多種多様な不調の原因が考えられます。
一個ずつつぶしていくしかないのですが思いもよらない原因があったりするものです。
「エアクリーナーボックスにつながるダクトの吸引口がリアバッグのベルトでふさがれてた。」
とかね。
まあ対処法が安価な方から確実につぶしていくといいですよ。
メンテナンスにもなるし。
普段から乗り続けているバイクであれば、
「そんなの急に調子を崩すことはない。」
はずなんですがね。
パイロットジェットの勘違い
一旦軽く締めこんだ処からパイロットスクリューを緩めて濃さを調整します。
緩めた方がガソリンの流路が広がるので濃くなります。
パイロットジェット自体は穴が開いてるだけで交換はできません。
パイロットジェットは交換できないのですが、
パイロットスクリューを緩めることでガソリンの供給量を増やすことができます。
パイロットスクリューの戻し量が主なアイドリング付近から極低速域のセッティングになります。
パイロットスクリューの戻し量は、
スロージェットからバイパスしてパイロット系にガソリンを供給しているのでスロージェットの番手も影響してきます。
※キャブをばらして各穴の導通をチェックするとよくわかります。
ワタクシは長らく「パイロットスクリューの戻し量は全回転域に影響する。」と勘違いしていました。
パイロットジェットの穴はバタフライバルブよりエンジン側にあるので、
アクセルを開けようが閉めようが、
アイドリングから高回転域まで負圧はずっとかかってるはず、と思っていました。
が。
実はシリンダーからの負圧が高くなると小さい穴からガソリンは吸わなくなるのです。
そりゃちょっとは吸うかもしれませんが、
穴が小さいと抵抗の方が大きいため、大きい穴から吸い出すようになるのですな。
この現象は薪ストーブの開口部でも確認できたりします。
通常運用時は開度が可変する小さい開口部だけを使って、
いわばアイドリング状態をキープするのが薪ストーブを燃費よく使うコツです。
※この箇所だけしか開けないのが普通かもしれませんな。
この開口部はキャブでいうところの、スロージェットに当たります。
アイドリング状態の弱い吸気で安定して空気を取り入れることができます。
のですが。
当倶楽部では薪ストーブの火が安定するまでは、
正面のウィンドウ部や下部の灰受け部の扉を少し開けて空気を多めに送ることがあります。
※火が安定するまで圧倒的に早いので。もちろん付きっ切りじゃないと危ないんですが。
この状態では、
ものすごい負圧が発生して勢いよく空気が薪ストーブに流入していきます。
※炎がゴゴゴゴゴゴ・・って本当に言いますよ。
これはシリンダーからの負圧が強く発生していて、、
キャブでいうとメインジェットから大量の混合気を吸いあげている「全開。」状態です。
この時、
通常運用するための小さい開口部は開けておきます。

薪ストーブの空気導入口。
こういうことです。
強い負荷がかかる状況で大きい開口部と同時に小さい開口部を開けるわけですな。
その場合、
小さい開口部からも空気の流入はあるのか?
実際にほとんど小さい開口部からの空気の流入がないのです。
わざわざ線香の煙で確認しましたが、
ほとんどの吸気は大きくあいた開口部から吸われて行きます。
負圧で吸われていく空気は吸気負荷のより少ない大きな開口部からだけ、流入するのです。
つまり。
「キャブ車でシリンダーからの負圧が大きい高回転時は、
ガソリンはスロージェットではなく、より大きなメインジェットから吸われて混合される。」
が正解です。
負圧が小さいアイドリング状態では大きい開口部からガソリンを吸い上げられないので、
負圧に応じた適切な大きさのスロージェットや、
さらに小さいパイロットジェットから吸い上げるということです。
要するに。
シリンダーからの負圧に応じて適切なジェットからガソリンを吸い上げるのがキャブの仕組みです。
アイドリング時点と高回転域ではガソリンが吸い出される場所が違うので、
それぞれを考慮したセッティングしなければなりません。
回転途中で段付きとか息つきをする場合、
ガソリンが吸い出される場所が切り替わる回転数(負圧)だったりすることもあるのです。
※CVKキャブはそこまでシビアではないのでセッティングが適当でもそれなりに走りますが♪
キャブはほんとに奥が深いのです。
空気の流れや負圧のかかり方などを考えたうえでアナログ式でガソリンの流量を決めてるのです。
設計した人はマジで天才です。
コンピュータで計算して理論的に詰めるのが今どきの車やバイクですが、
最適解をあっさりたたき出すデジタルにはあんまりロマンを感じないんですよ、ワタクシは。
※2stはさらに感覚に近いものがあるのでさらにロマン度が上がるのです。
最近の車やバイクはよく出来すぎていて最初から100点なんですよ。
素人や町のショップレベルで調整する余地なんて全くありません。
素人が改造すればするほど調子を崩します。
キャブを搭載しているような旧車は未完成な部分があるので、
そこを自分仕様にカスタマイズするのが面白いと思うんですがどうか?
ちなみに・・
パイロットジェットはものすごい小さい穴です。
ココが詰まったり変形したり内部に傷があったりするキャブは元に戻らないので廃棄となります。
穴が詰まってるからと言って針金でほじったりするとまともにアイドリングしなくなります。
※昔は荷札の針金で詰まりを取れ!と言われてたもんですがね。
自然落下式のガソリンコックを開けっぱなしにしてある放置車両はあっという間にパイロットジェット周辺の穴が詰まります。
今や中古のキャブはジェットるはもちろん、そこまでの導入路がダメになってることが多いです。
※某オークションなどで旧車のキャブが非常に高価に取引されていますがハズレを引くリスクが極めて高いです。
とはいえ。
キャブは基本的に消耗品なので、
長年使うと各部が摩耗してきてマニュアル通りのセッティングだと不具合が起きたりします。
※いわゆる旧車についてる純正キャブは不具合があるのが普通です。
ポンポン新品に変えたいところですが交換部品がないんですよ。
他車からの流用ったってキャブ車自体が絶滅して20年くらい経過してるので、すべての純正のキャブとそのパーツは品薄状態です。
中古では高額でまともなものがないという状況になりつつありますね。
※人気の旧車、4気筒の4連キャブなんて維持費かかりまくりですよ。
ところが。
捨てる神あれば拾う神ありでして。
純正キャブのパーツを潤沢に提供してくれているメーカーがあります。
マイナー者を含む多種多様なキャブ車に対応したラインナップがある。
本当にありがたい。
当倶楽部のCVKキャブはこれらのパーツのおかげで運用できてるといっても過言ではありません。
手に入るうちにストックしておくのが吉。
それでもキャブ本体や内部のフロートやガスケットなどのパーツの提供はないので、
やっぱりキャブ車の維持はこれからもっと大変になると思われますな。
まとめ
コンピュータ解析したってガソリンが流れる経路とか穴の位置とか大きさとか難しいと思うんだけれど、
それをアナログで設計して形にしてる時点でかなり神です。
複数の穴の大きさと位置で負圧の変化に対応してるとか素晴らしいアイデア。
※メインジェット一個で全部やってる旧miniのSUキャブなんてのもすごいけど。
しかも、
その時々の環境に合わせてパーツの交換でセッティングできるようになってる。
キャブをつくった人は空気とガソリンの流れが見えてたのですかね?
そうでないとこんな設計はできないと思うんですが。
本来、季節や標高、気温によって影響を受けるはずのガソリンの気化なのに、
あんまり受けないレベルにまで到達してる最終期のキャブは熟成の極み。
※メーカーの純正セッティングを素人が超えることはまず不可能です。
電子制御ならセンサーたくさんつければ可変式にできるし、細かい対応も簡単だと思うけれど、
混合気の濃さや負圧の変化に対して匂いとか色とか経験で人間が判断してたというのがすごい。
それくらいキャブは奥が深いのです。
もう公道を走れる新車の車やバイクにはキャブは搭載されていません。
すでに絶滅して20年以上が経過しますが、こんなに面白いもんが世の中からなくなるのはもったいないと思うのですが。
面倒くさいけれど、それが面白いのよ。
なんでも簡単にできちゃう世の中だから余計そういう面白さが際立つ気がしますな。
電子制御は高性能で均一な性能が出せますが、
不具合が起きるとアッセンブリで交換が基本です。
10年以上乗るならちょっと不安がありますな。
とはいえ。
キャブのパーツも年々入手するのが大変になってきています。
それでもワタクシは素人が一生懸命知恵を絞ってキャブの調整をする姿こそ、エンスーっぽいと思っています。
そういう 金にならない 誰もがやらないことを突き詰めるのがカッコいいんですよ♪
ちなみに・・
冬の間、当倶楽部の車やバイクは必ず2週に一度程度のスパンで全車両のエンジンをかけるようにしています。
バッテリー外してあるのでいちいち接続するのは面倒くさいですが、
たまにエンジンかけておかないとワタクシの気がすみません。
※なんか放置してるみたいでかわいそうじゃん。
その時、気温によってはガソリンの気化状況が変わるのですよ。
※冬のガレージの気温は普通に0度以下です。
とはいえ。
排気量が大きいと多少パイロット域の混合気が薄くてもエンジンは簡単にかかる傾向があります。
※チョークをひかなくても負圧が大きいとエンジンは始動しちゃいますが、そのままだとプラグは真っ白になります。

混合気の薄いときのプラグ。
これでもセル一発でかかっちゃいます。
バイクなんて趣味のもので初戦遊びにしか使えない無駄なものなんだから、これくらい面倒くさい方がいいのですよ。
キャブの機嫌を取ったりするのを繰り返すうちに「自分だけの愛車。」になっていくのですな。
こういうのが旧車の楽しみだったりします。
※そういうバイクを「終のバイク。」にしたいのよ、ワタクシは。