意外にそんなことはないのです。
水冷エンジンだって条件は同じです。
エンジンは100度くらいになるので気温35度でも温度差でちゃんと放熱します。
ちゃんと風に当たってれば、ですが。
オイルクーラーを装備しても走って無ければ意味がないのです。
当記事の目次
結論から言うと「走ってればエンジンは冷える。」
※水冷式エンジンのサーモスタットが開くのは大抵90℃前後に設定されてるはずです。
よほどひどい設計でない限り、ですが。
よく考えればわかることですが、エンジンは内燃機です。
と言うことはエンジン内部でバンバン爆発してるわけですよ。
その熱量たるや100℃を軽く超えます。
発熱する機関であるエンジンを、
ただそれだけです。
ただし、
「空冷でも水冷でもエンジンの冷却はバイクが走って風に当たってることが前提である。」
のですよ。
どういうことなのか?
詳しく書いてみようじゃないですか。
旧態依然としてるように思われる空冷エンジンだって、決して捨てたものではないのです。
水冷でも空冷でも風に当たることで冷やす
ラジエターは空気が流れないと効率的に冷えません。
空冷エンジンは、エンジンのシリンダー回りに「冷却フィン。」と呼ばれる板状の金属部が張り出していて、空気に触れることでエンジンを冷却しています。
※空冷エンジンのフィンは放熱板とかヒートシンクの様な役割を担っています。
もちろん、走行風をこのフィンに当てないと効率のいい冷却はできません。
やはり空冷エンジンは美しいのだ。
汚れると大変ですが。
物理的にフィンを大きくする
「空冷エンジンの冷却フィンを大きくして放熱効率をよくする。」
というのも昔から良く語られている話です。
ヨシムラから、GSX1100S用のビッグフィンキットが売られてたことがある位、割と理屈に合った冷却効果アップ法です。
※Z系用のビッグフィンキットも昔からあった。
同じ理屈で、
「金属性の洗濯ばさみを冷却フィンにたくさん挟んで冷却効率を上げる。」
という、都市伝説のような珍走団が喜びそうなカスタマイズもありましたが、理屈だけ考えれば理にかなってたりします。
※ダサいのでよほどの確信犯以外は止めたほうが無難です。ドン引きされます。
ウケ狙いでどうですかね?
大昔の
一方、水冷エンジンには冷却フィンがなく、見た目はつるんとしています。
エンジン内部に水が回っており、エンジン前方に「ラジエター。」という冷却装置を持っています。
水冷エンジンのラジエターというのは、細い管の中に水(不凍液、冷却液ともいう)を通して、管と管の間に張り巡らせた細かいアルミのフィンで放熱する構造です。
空気がラジエターに当たることで、細かいアルミのフィンの熱を奪って、間接的にラジエタの管の中の水分の熱を奪っています。
ラジエターガードの後ろにラジエターのフィンと管が確認できる。
見えなくても心の目で見るように。
というわけで、
ラジエターに空気が当たらないと水冷エンジンであっても効率よく冷えることはないのです。
いいですか。
「空冷エンジンはもちろん、水冷エンジンと言えども冷却には空気の流れが必要。」
なのですよ。
※放熱量の高い水冷エンジンは走行風の他に冷却ファンで強制的にラジエターに空気を流すことでさらに冷却効率を上げます。
バイクが走行していない無風状態では、水冷でも空冷でも効率のいいエンジン冷却は望めないのです。
あまり知られていませんが、KDX125SRの右側のシュラウドの中にはラジエターがないのです。
オイルタンクが入ってます。
ちなみに・・
バイクのエンジン水冷化の最初の頃。
大排気量の熱量の大きいバイクは明らかに放熱量が不足してたようです。
TOPGUNで一躍脚光を浴び、バカ売れしたKAWASAKIの大人気車種なんかその典型でして。
エンジンのメインスイッチ切ってもファンが回りっぱなしだったりしたものです。
※ファン周りはメインスイッチとは別の独立系の電装だったんでしょうねえ。 バッテリーが心配になりますな
KAWASAKIは水冷化がヘタだったようです。
こちらも当時年間売り上げでトップを記録したようなバカ売れした某400ccの車種は空冷エンジンを無理やり水冷フルカウルにしたような設計でして。
放熱設計に無理があり、カウルとエンジンの隙間にゴム板を挟むのが仕様でした。
このゴム板がないと膝に熱風が当たり続け、低温火傷するというお粗末な仕様でした。
※この車種、現存車両が極めて少ないですが、長く乗ってる人はアンダーカウルを外すのがセオリーでしたな。 設計が悪いので運用が大変そうでしたが。
一方、熱的に厳しいHONDAのV4エンジンも初期は冷却に苦労したようです。
車検の検査ラインでエンジンかけて並んでる際に、冷却水が沸騰して噴出したのを目の当たりにしたことがあります。
※車検のラインでその状況だったらワタクシならビビりまくりますが。 検査官が唖然としていました。
当時のバイクは今のバイクに比べて 設計の甘さが原因かどうかは知りませんが 明らかにラジエターが小さいです。
まあ、走ってればまだいいのかもしれませんが、エンジン冷却不足に陥りやすいのは確かなようです。
真夏の渋滞はバイクの寿命を縮める
そんなときは、水冷だろうが空冷だろうがエンジンの放熱量が足りていません。
特に真夏の渋滞はエンジンにとっては最悪なのです。
「真夏のデカい空冷バイクは5分もアイドリングすれば軽いオーバーヒート状態になる。」
一昔前、ドラッグレーサーを作らせれば日本一と言われてた某有名店の店長が言ってました。
※真夏は停止時のアイドリング状態でも放熱量は全開走行時と同じレベルだそうですよ。
走行風があてにならない状態でエンジンの熱を適温にするのは無理があるのですよ。
Z1系バイクはオイルクーラーがない方がすっきりしてカッコいいのもわかる。
試しに。
水冷エンジンはどうか知りませんが、デカい空冷エンジン搭載車に油温計を取り付けてごらんなさい。
※昔ヨシムラの後付けデジタルオイルテンプメーターが流行りましたな。
ヨシムラ製の油温計は今は売ってないね。
昔はもっと低機能で三倍くらいの値段しました。
コレ、真夏の渋滞では120度なんて軽く超えます。
あれよあれよという間に、天ぷらが上がる温度になりますよ。
※上記の油温計、表示される油温が高すぎて心臓に良くないのでみんな外しちゃうんですよねえ♪
水冷は、どうなのか知りませんがすごい勢いで電動冷却ファンが回ってるのではないでしょうか?
一応、水温的には100℃くらいなのでしょうが、その温度を保つにはかなり全力で強制的に風を当ててると思われます。
※真夏の渋滞時に電動ファンから排出される風は凄い勢い&熱量なハズなのです。
過剰なエンジン温度対策が出来てる最近の公道走行可能なバイクなら、それほど気にしなくてもいいのかもしれませんが、エンジンはオーバーヒートさせると歪むのですよ。
もちろん、
歪んだエンジンパーツの合わせ目からオイル漏れをするようになったりするのです。
ちなみに・・
昔の水冷2stは冷却ファンなんかついていません。
ゆえに、
とにかくラジエターに走行風を当てることだけでエンジンを冷やしていました。
※こうなると、冷却的には空冷とそれほど変わりない気もしますな♪
2st全盛だったレプリカ時代には、
という割り切ったバイクが多かったのです。
※レプリカ系バイクの多くがそんな感じです。
ゆえに、
「ゆっくり走るとオーバーヒートする車種がある。」
のでした。
ワタクシが体験したのは、
DT200WRで初心者女子のサポートをすべく、歩くようなスピードで林道をしばらくゆっくり登ったら。
オーバーヒートランプが点滅!?
DT200WRには冷却ファンなんかついてないので、走行風による冷却が追い付かず、オーバーヒート寸前になったと推測されます。
※走るとラジエターを経由してシュラウドから吐き出される風は結構熱いのでちゃんと冷却されてるのがわかる。
実は水冷の方がいったんオーバーヒートするとエンジンのダメージがデカいのですよ。
※エンジンを構成するパーツが歪んで冷却水がエンジン内外に漏れると、冷却不足どころか内部でオイルと混ざってエンジン自体がダメになる可能性があるのでした。
最近、本気系のオフ車には冷却ファンが装備されてたりします。
初めて見た時は時はビビりましたが、エンデューロなどで泥が詰らないのかしら?
まあ、レースでも歩くようなスピードでクリアするセクションやレース中の渋滞もあるので走行風に頼れないことは多いのですが。
冷却方式によるエンジン温度の傾向
ゆえに、安定した温度管理がしやすい。
空冷エンジンは、一気に油温が上がるけれどちょっと走行するだけで一気に冷却されるのです。
峠の下りでは一気にエンジンが冷えますしな。
理科で習った「海。」のようですな。
こちらは「陸。」のようです。
渋滞を抜け出して車が流れるようになると、エンジンに走行風が当たり、上がりまくったエンジン温度は下がり始めます。
空冷エンジンは一気に油温が下がるのですよ。
そりゃもうあっという間に下がります。
特にアクセル開度やエンジン負荷の小さい峠の下りでは気持ちいいくらい一気に下がります。
純正っぽくオイルラインがサイドじゃないのがイカス。
一方、
水冷エンジンの水温低下速度はかなりゆっくりというか、メーター上あんまりはっきりわかりませんな。
※壊れてなければ渋滞でもそんなに水温上がってないハズ。
エンジン温度の安定という意味では、水冷エンジンに分があるのは確かなようです。
当然、ガソリンの燃焼効率を向上させるためにはエンジン温度も重要になるわけで、空冷エンジンは環境性能の基準が厳しくなればなるほど、生き残るのが難しくなるのですねえ。
※キャブも環境に対する性能の安定性という意味では強く出れないですし。
当倶楽部にあるような、キャブ車、空冷エンジンなんてバイクはどんどん消えていく運命なんでしょう。
世知辛いねえ。
ちなみに・・
中古市場で大人気の初期のRZ250には、サーモスタットが付いていません。
サーモスタットというのは、エンジン温度がある程度上がる迄ラジエターに冷却水を回さないようにする機構です。
※シリンダーヘッドの中央部から伸びてる冷却水のパイプの根元に入っています。
サーモスタットの意味合いは、
「エンジンが冷たい状態では、エンジン内に冷却水を回さない。」
こうすることでエンジンの暖気時間を短くしたり、走行中のオーバークールを防止したりできるのですな。
※サーモスタットは今どきの水冷バイクには絶対ついています。
レーサーを手本にして設計されたというRZ250のエンジンは、当然のように全開放熱時のことしか考えてなかったと言われています。
全開時の冷却性能は確保したけれど、普段使いのエンジン温度の管理までは想定してない設計でした。
※後継モデルのRZ250Rからは、公道での使い勝手を考えてサーモスタットが標準装備されました。
このRZ250R用のサーモスタットは初期のRZ250にそのまんま流用できたので、知ってるというかわかってる お金のある RZ250オーナーは流用してたものです。
わかってない 貧乏な RZ250オーナーは、
「寒い時期は段ボールなどでラジエターの目張りをする。」
という作戦で乗り切っていました。
※ワタクシのことです♪
今ならゴム板などでもっと綺麗に作っただろうけれど、生きるのが精いっぱいだった貧乏バイト学生には純正サーモスタットなんて 腹の足しにもならない 物は買えませんでした。
デカい空冷エンジンにはオイルクーラーは必要なのか?
でも、80年代初頭くらいまでの空冷エンジンのバイクにはそんな物はついてないのです。
果たしてオイルクーラーは必要なのか?
「当時の夏は今より気温が低かった。」
「当時は今より渋滞が少なかった。」
と言ってしまえばそれまでですが、昔はそれほど公道では油温に関して無頓着だったような気がします。
時代的、技術的な問題かと言えばそんなことはなく、昔のレースの動画を見ると割と初期の頃のZ1ベースレーサーでもオイルクーラーが装備されてるのが確認できます。
※70年代から80年代の米国のバイクレース中継は凄く面白いので見ておくべき。YOUTUBEなどでも探せば結構ある。
こんな記事もあります▼
オイルクーラーはエンジン内部のオイル量をオイルクーラー分増やせます。
ゆえに、
「オイルクーラーを装備してエンジン内部のオイル量を増やして冷却をサポートする。」
という意味では有効な装備です。
※旧FIAT500(空冷RR18馬力♪)のチューニングでは、オイルパン自体を大きくしてオイル量を増やし、エンジンの冷却を助けるのが一般的。
CBX400も「オイルクーラー。」と表記すると、当時の日本国内ではエンジンの形式認定が許されなかったので「オイルリザーバー。」とされているのは有名な話です。
※形式認定の際、よくわかってない運輸省のお役人には「オイルのサブタンクですよ♪」とか言ってごまかしたんでしょうねえ。
とはいえ、
現代でも限界性能を引き出し続けるわけではない公道で走る分には、オイルクーラーはそれほど必要ない気もします。
渋滞が少ない田舎部での話に限られるかもしれませんが。
※ほんとにバイク乗るなら田舎に住むべきですよ。たとえ冬に乗れなくても都会よりはるかに充実したバイクライフになると思います。
配管の周りのアルミのフィンで冷やしてる。
※このアルミのフィンが飛び石とかですぐ曲がるんですよ。
当倶楽部では、
で、もう20年くらい運用していますが特に問題ありません。
オイルクーラー装備だからと言って、Z1-Rの油温が特別下がってるとも思いません。
※付ければ気休めになるのは確かだと思うのですが。
当倶楽部のZ1系エンジン
当倶楽部のZ1-RやZ750D1は真夏でも普通に使っています。
とりあえず、
法定速度で車の流れに乗って走ってるだけで、たとえ気温が35度でも割と問題なく放熱してるように思えます。
エンジンの100度くらいの発熱というのは、気温35度くらいの風でも当て続ければちゃんと冷却されるようです。
※正確な油温を測ったわけではありませんが、安いオイルでも熱ダレしたりクラッチが滑ったりと言うこと長野に来てからはありません。
田舎は良いですな♪
もちろん、
油温が上がりそうな観光地近くの渋滞にはまるようなときは、
「渋滞が動きそうもないならエンジンを切って発熱を押さえる。」
「長い信号待ちではエンジンを切って待つ。」
と言うことをしています。
まあエンジン温度が上がっても、空冷なので走りだせば一気に冷えるのですが。
とはいえ、
当たり前ですがデカい高性能なエンジン搭載車というのは、放熱量もそれなりに大きいはずです。
最近のシッカリ設計された高性能なバイクなら、それほど問題がないのかもしれません。
でも、
古いバイクはエンジン温度に関しては設計上、割と無頓着っっぽいのです。
なので、
ずっと渋滞が予想される場合は、それなりに気を使ってあげたほうが良さそうですよ。
※道中が混みそうな場合は、混まなそうなルートを選択するとか、混まなそうな時間に移動するとか。
最近の真夏の気温では、バイクより先にライダーが参っちゃうかもしれませんがね。
当倶楽部でも、最近は35度を超える様な気温あと小さいバイクで山に涼みに行く方が気楽でいいということになりつつあります。
山から1500mも一気に降りてくると、下界が暑くてやってられないんですわ。
それにデカいエンジンの熱量が追い打ちをかけてくる。
こんな記事もあります▼
ちなみに・・
一般に公道では空冷エンジン搭載車のオイルクーラーと言えば、
「シリンダーヘッドの前辺りのフレームに吊り下げる。」
と言った位置が定番化しています。
とはいえ、
放熱効率の良いオイルクーラーの配置はちゃんとあって。
特に耐久レースでのオイルクーラーの配置は、
「ヘッドライトの下、フレームマウント。」
が、だんだん定番になっていくのです。
※CBR400Fシリーズのデザインはまさにコレです。レーサーレプリカだからね。
要するに、
「車体の一番風が当たる場所にオイルクーラーを配置して冷却効率を上げる。」
ということなのですな。
そして、
「シリンダーヘッドの前辺りのフレームに吊り下げる。」
方式は、
「積極的に放熱したいシリンダヘッドへの風の流入を妨げる。」
と言われ、レースの世界では次第に廃れていきます。
ただし、
公道では、
「シリンダーヘッドの前辺りのフレームに吊り下げる。」
方式は昔から現在まで圧倒的に支持されています。
設置位置としては致命的な問題があるのになぜか?
・
・
「カッコいいから。」
ですよ。
公道では極限の冷却効率なんかより、格好良さが優先なのです。
それでいいんですよ。
サーキットのように全開走行できるわけでもないので。
まとめ
オイルクーラーは田舎ならあってもなくてもいいけど、気を使うべき。
都会ではオイルクーラー付けてても風に当たらなければ意味がない。
今回はエンジンの熱の話をしてみました。
まじで、ここ数年の夏の気温がおかしいですよ。
避暑地と 誤解される 表記がある長野県でも、普通に35度を超えてきます。
※ヘルメットのシールド開けて走ると目が乾いて困るし。
そんな中でも、バイクのエンジンは一生懸命回ってくれています。
それはライダーが想定する良いはるかにハードなミッションなのですが、ちゃんとアイドリングもしてくれたりして健気なのです♪
なので、
たまにはバイクのエンジンにも気を使ってあげましょう。
※オイル交換とかいつしました?オイルは足りてますか?エアクリーナー清掃はしてますか?水冷なら冷却液は足りてますか?
とはいえ、
デカい放熱量の大きいバイクで気温35度の中で渋滞に合うのはワタクシはもう遠慮したいのでした。
※特に真夏の都会でデカいバイクに乗るもんじゃない、という気もします。
市街地より15度くらい涼しい。
特に中高年のライダーは熱中症にも気を付けたいものです。
走行風を浴びてないと、バイクより先にライダーの方が負けてしまいかねません。
まあ、バイク乗りというだけでそこらへんにいる中高年よりは熱中症に強いとは思いますが♪
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いつまでも自分達世代が主役ではないので、そろそろ若いもんに道を譲らんといかんの。
最近の異常な暑さの夏に対峙すると若いころはなんであんなに夏が大好きだったのか、理解に苦しみます。
※真夏にバイクで海に行くとか、バカじゃないかと。何しに行くのか問いただしたい。
最近は、
「それが若さってもん。」
じゃないかと思うようになりました。
若い時の苦労は買ってでもせよ、と昔の人は言いましたがこういうことなのかもしれませんな。
若いころに地獄を見なかった人には天国は訪れないのかもしれません。
※いつの世も、大人は若者のことを理解しない物なのですなぁ♪と自虐的になりつつ実感している今日この頃だったりします。