三回目は【プラスとマイナスのネジ】の話です。
これも誰も教えてくれません。
せっかくなので、うわべだけ覚えて後輩に語って聞かせて迷惑がられてください。
プラスネジとマイナスネジを使い分ける理由
フィリップス(+)、フラット(-)と呼ぶのがユニバーサルな呼び方です。
現在見かけるネジの「ほとんどがプラスネジ」です。
普段見かけるネジの多くはプラスネジなはずですよ。
現代は、マイナスネジは限られた用途で使われてると思っていいでしょう。
実は、
プラスネジとマイナスネジは使用される環境によって使い分けされているようなんですよ。
具体的にいうと、
「ネジの使用される環境が汚れやすいかどうか」
が一つの基準になってる感じです。
ただし、
プラスネジはネジ山に汚れやゴミが溜まりやすいのですよ。
※古く錆びたネジ山が錆や汚れで詰まってることは珍しくありません。
マイナスネジはネジ山が貫通していて単純なのでゴミを洗い流しやすいんです。
必要以上のトルクで締める必要がないならマイナスネジでも十分ってことですね。
ネジはマイナスから始まった
最初のネジは「マイナスネジ」だったようです。
機械化が進むにつ入れ、
釘などの結合パーツでは対処できなくなったため、スクリュー式のネジが開発されどんどん多様化していきました。
そのうち、
より強い強度で材料どうしを結合、固定したいというニーズが出てきます。
より強固なトルクをかけられるプラスネジはそういう背景で誕生したようです。
ちなみに・・
ネジは上下左右、垂直水平いろんな位置についていますので、ネジの回転方向がわかんなくなることがあります。
締めるには
右ネジの法則を思い出しましょう。
右手を握って指の巻く方向に回せば閉まるっていうあれです。
車の下にもぐっての作業とかでは、たまに確認します。
要するにほとんどのネジは時計回りで閉まります。
英国車のマニュアルの原文には「clockwise(時計回り)」という表現が多用されていました。
※半時計回りは、「Anti-clockwise」と書かれていました。
一瞬よくわかりませんでしたが考えてみりゃ納得です。
※米国と英国では、いろいろ表現が違います。ボンネットとかエンジンフードとか。統一しろや。
特殊な逆回しネジも存在します。
逆ネジで有名なのはYAMAHAのバイクのミラー
ですね。
※走行中に緩まないように、と昔からかたくなに逆ネジです。
あと思いつく限りでは、KDX125SRのKIPSアーム部のネジですね。
※ボルトに回転方向がわざわざ刻印してあります。
プラスネジ
世界的にメジャーなプラスネジですが、世界ではフィリップス(H型)と呼ばれています。
プラスネジはマイナスネジより、ネジ自他の製造に手間がかかるのでしばらくは主流にならなかったようです。
※頭に切れ込みを入れるマイナスネジと金型で成型するプラスネジでは製造技術的に差があります。
プラスネジは、マイナスネジに比べてドライバーとの接点が多く滑りにくいため、高トルクをかけられます。
機械化産業の発展とともにどんどん勢力を拡大、マイナスネジを駆逐していきます。
鍋ネジって英語では「pan head screw」ってそのまんまの直訳です。
「パン(鍋)ヘッド」っていうとハーレーのあれですな。
※食パンとかのパンじゃないんだぜぇ。
さらに、
用途によって「多種多様な素材で作られている」のでマニア(居るのか?)にはたまりませんな。
変わったものでは
なんてものまで存在します。
プラスネジのいいところ
プラスネジのだめなところ
多少ネガな部分がありとはいえ、
現在はプラスネジはありとあらゆるものに使われています。
車やバイクはもちろん、工場、構築物、家電、目につく機械製品でプラスネジが使われています。
工業化する場合、作業効率がいいからですよ。
ちなみに・・
プラスネジを日本に持ち込んだのは「本田宗一郎氏」だと言われています。
※1950年代、宗一郎氏が欧州視察の際に既に自動車産業で広く使われていたプラスネジを見て自社に持ち帰ったそうです。
プラスネジを使うことで、
日本の産業全体の作業効率が上がります。
さらにネジはボルトへと進化していき、工業の自動化が加速していきます。
こうして、日本が工業立国になっていったというわけです。
総一郎氏はやはりすごい。
普通じゃないですわ。
機械屋として、この人はほんっとにすごいです。
※一升瓶持って運輸省に怒鳴り込んだ話が好き。
マイナスネジ
そして、
しつこく使い続けてる業界もあります。
プラスネジは、溝が埋まってドライバーを受け付けなくなることがあります。
劣化度合いと場所によっては「抜くのが無理」と言う状態にもなりかねません。
なので、
ネジ山の溝が汚れるような環境で使われるネジにはマイナスネジが使われることがあります。
※溝が単純なので洗い流すのも楽だし。
さらに、
旧態依然とした手作りの職人の世界では現在も「マイナスネジが重宝がられている」ようですよ。
高級路線
マイナスネジは「手作りの家具」や「ハンドメイドの時計」など大量生産せずに職人が一個一個作るようなモノには比較的使われています。
特に、高級腕時計はマイナスネジの使用が多いです。
ワタクシの持ってるΩもタグホイヤーも裏のフタを開けたらマイナスネジだらけでしたし。
それほど高トルクが必要ない個所ならコレもまたヨシ。
どうやら、
「機械式腕時計が作られ始めた当時(1920年代位?)はマイナスネジしかなかった」
らしいんですよ。
職人は閉鎖的で革新を嫌うので、そのまんまマイナスネジが使われ続けてるんですかねえ。
※一回転して高級品になっちゃうところがまた歴史の面白いところですな。
というわけで、
欧州のマイスターみたいな職人が作るようなもんは結構マイナスネジが使われています。
※米国人は効率化とか合理的とか大好きなのでたぶん全部プラスネジだね。
マイナスネジのいいところ
マイナスネジのだめなところ
マイナスネジを使うもの
マイナスネジの生産数はネジ全体の1割程度ですが、地味に活躍しています。
風呂場や洗面所、流し台やシンクなどの水回りに使われることが多いです。
※割と大きいサイズなので見つけやすいですよ。
また、
屋外の電灯周りや公共交通機関の足元、エスカレーターのステップ部にもマイナスネジが使われています。
これは前述したように「汚れやすく錆びを呼びやすい環境」だからですね。
※かなり大きいサイズです。
普段の生活圏でマイナスネジを見つけたら、
「おお!汚れやすいのに頑張っておるな!結構結構。」
と上から目線で褒めてあげてください。
まとめ
マイナスネジは生産性度外視で高級化、もしくは汚れが溜まりやすい個所に使われるようです。
マイナスネジってもっと使われてるイメージでしたが、実はネジの生産量の1割くらい。
ちょっとショックじゃない?
今回も勢いで書いてしまいましたが、結構ワタクシ自身が勉強になったので、まあいいかと。
次回は「ネジの種類や材質」にも踏み込もうかと思いましたが、
ワタクシの現在の知識量では全然足りず、宇宙を語るくらい細かくなり具体性がないのでしばらく勉強してみようと思います。
※幸い、そういう仕事なので調べやすいってのもある。
リクエストがあれば頑張ります。
というわけで【初心者メンテ講座】は第三回まででいったん終了します。
ちなみに・・
全然関係ないけれど、
「戦闘メカザブングル」のキャラの目はネジ目と言われていましたが、正確には「マイナスネジ目」ってことですね。
※「ザブングル」は冨野監督が宮崎駿氏の未来少年コナンに憧れて作った説を強く支持。「ダンバイン」はナウシカと赤毛のアン。
最近「隠れ家風レストラン」がお気に入りだ。
マジで此処のハンバーグは旨い。
とりあえず、本文とは全く関係ないが言いたいことは以上だ。