特にキャブ車のエンジンは冬は機嫌が悪いのです。
それは何故なんですかね?って話です。
ついでにそういう場合はどうすんだ?っていうことも書いておきます。
冬の朝はエンジンが不機嫌
キャブ車の冬の朝なんてエンジンの始動性は最悪です。
最初に書いておきますが、
当記事は「キャブ車。」について書いています。
インジェクションは所有したことないのでわかりません。
冬の寒い朝にバイクで出かけようとしてセルを回しても、
夏のようにすぐにエンジンがかからないことがありますね。
インジェクション車はその辺を勝手に調整してくれますが、
キャブ車はこの辺のエンジン始動の儀式ができて初めて一人前だったりします。
ということはバイク乗りなら誰でも知っているハズだし、実際にやってると思います。
※負圧コックと落下式コックでは違うんだけれどね。
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冬場はいろんな原因でエンジンが始動しにくいのです。
キャブ車である古いバイクや車には個別に個性というか癖があります。
誰でも自分のバイクのエンジン始動に慣れるまでは、
いろいろ工夫したり、加減を調整したりするものです。
そしてだんだん自分のバイクとして馴染んでいくのです。
その結果、
「自分しかこのバイクを始動できない。」
そういう自分だけのスペシャルバイクという満足感が得られるのがキャブ車です。
※だから旧車は愛車になりやすいのです。
とはいえ。
エンジンの始動性が悪いのは整備不良な可能性もあります。
※コンディションが良くても、設計上の問題で始動性が悪い車種というのも存在するんですがね。
とりあえず。
冬場にエンジンがかかりずらい現象を検証をしていきます。
※冬は毎年この手のお問い合わせが多いのですよ。 少しは自分で考えるように。
ちなみに・・
長野では ふつうの人は 基本的に冬はバイクには乗りません。
寒いからではなく、道路が凍るし雪が積もるからです。
寒さに耐えて走ってもワタクシのように骨折したりするし、いいことないのです。
※晴れて路面がドライ気味でも橋の上は凍っていることがあるしな。

見るからに寒そうな冬の長野と当倶楽部の優等生ラパンSS。
冬は車に限る。
※こういう路面状態でバイクに乗ると、ワタクシのように足を折るのでやめた方が無難です。
冬の当倶楽部のガレージでは、
各バイクのバッテリーを外してローテーションで充電するのが恒例となっています。
昨年、バッテリーチャージャー2号機を購入したのでローテーションが楽になりました。
※冬のコンクリートは超冷たいので外したバッテリーはコンクリートに直置きしないのが長持ちさせるポイントです。
それでも。
長くても2週に一度はわざわざバッテリーをバイクに積んでエンジンを始動しています。
庭に雪が積もっていても、気温が‐5℃くらいでも、です。
全てはエンジンの調子を維持するためです。
しんしんと雪の降る景色を見ながら、
ガレージのシャッターを開けてエンジンを始動するのはちょっとした非日常感があるのですよ。
※排ガスを輩出するために工場ファンを全開にするので超寒いのですが結構いいものなのです。
ガソリンの気化の問題
コレもエンジン始動がしにくくなる要因の一つです。
エンジンは気化したガソリンと空気の混合気をシリンダー内で燃焼させることで動作します。
これはインジェクションもキャブも変わりません。
とはいえ。
インジェクション車はその時その時に適した混合気を作って、
シリンダに放り込むので外気温の影響を受けづらい。
対して。
キャブ車は燃料の混合をシリンダからの負圧(吸気)に任せて行っているため、
外気温が低くガソリンが気化しにくい状態ではエンジンの始動に影響を受けやすい。
キャブ車に乗るバイク乗りは、
「キャブレーターはインジェクションに比べて空気中の酸素濃度の影響を受けやすい。」
ということは知っておいた方がいいのです。
難しいことは省きますが、気温の下がる冬は空気の密度が上がるので酸素濃度が高くなります。
そのため。
冬に夏と同じ量のガソリンを供給しても酸素が濃くなった結果、混合気が薄くなって燃焼しにくくなるわけです。
混合気が適正な濃さにならないとエンジンは始動しないので、
チョークやアクセル開度などで調整しながらエンジンを始動する必要が出てきます。
これは癖のようなもので、同じ車種でもバイク一台ごとに異なるのが普通です。
オーナー自身がその癖に慣れないと、
ガソリンと空気の混合の割合が燃焼に適切な状態にならないので、いつまでたってもエンジンは始動してくれません。

CVKキャブはセッティングは楽なんだけどね
キャブのフロートのガソリンが足りてないとエンジンかからないのよ。
※寒いと特に。
が。
バイクに乗り続けてオーナーが慣れてくるに従い、エンジンの始動の手間がだんだん減っていきます。
癖があるのでオーナーしかエンジン始動できない、とかになると自分専用機っぽい気がするものです。
こうなると愛着がわくというものです。
というわけで。
気温が低い冬は混合気がエンジン始動に必要な条件を満たせないのでエンジンはかかりにくいのです。
※そういう状態で馬鹿みたいにセルを回してもエンジンはかからんのよ。
冬場のエンジン始動が鈍い場合、
ガソリンの気化を助けるためにバイクに応じた操作をすることに徹します。
まずやってみるのはチョークやアクセルで混合気の状態をコントロールすることです。
※初爆が起きれば割といい線行ってるってことです。
そうそう。
2st乗りは始動の儀式がよりシビアです。
2stのキックスタートの場合、エンジンがかからんと言ってアクセル全開にしてキックを多発するとプラグがかぶりますよ。
昔は出先で泣きそうになってる2st乗りは結構いたのです。
※バイクブームの時は、アイドリングも不安定なひどいコンディションの2stでツーリングに出てくる小僧が佃煮にするくらいいたのです。
キックスタートのバイクも個体差で癖が違うのですがね。

DT200WR。
エンジンが始動しずらいと有名なDT200WRですが当倶楽部の個体は冬でもすぐにかかりますよ。
もうすぐ8万キロ走行ですが。
ちなみに・・
いつでもチョークは全開で引けばいいわけではないのです。
実際に同じバイクでも個々のコンディションでチョークの引き加減が違うのは割と普通です。
これはチョークの引きしろは、その時その時の気温による影響もあるし、キャブの個体差にもよります。
この手の癖は長く付き合わないとわかんないもんなのですよ。
キャブ車の場合、個々のバイクの癖によりますが、
などの工夫がいることがあります。
※これを「エンジン始動の儀式。」などと呼ぶのですが、エンスーっぽいですな。

Z1-R。CVKキャブのチョークレバーをワンオフしました。
このチョークレバーが優れもの。
作ってもらって良かった♪
最近の燃料噴射が電子制御でおこなわれるバイクの場合、
自動的に混合気の補正をおこなうため特別な操作は要らないらしいですな。
※未だに電子制御のバイクは一台も所有したことないです。
ともあれ。
冬のキャブ車はエンジン始動の儀式から経験がものをいうのです。
こういうのがかわいく感じられない現代的な価値観の人は、
古いバイクや車に乗るとな気が入るか癇癪起こすかですぐ手放しますよね。
※そんでSNSとかで悪口言いまくる。自分が旧車に対応できてないのに自分を正当化しすぎです。
まあ「調子のいいバイクはエンジンの始動性が良い。」ハズなのです。
※経験上、始動性が悪いバイクはどっかおかしいことが多いのよ。
バッテリーが弱ってる
今のバイクはバッテリー点火なのでバッテリーが弱ってると火花が弱るため、始動しにくいのです。
バッテリーは化学反応で電気を起こしてためています。
外気温が低下するとバッテリーの化学反応が鈍くなって、バッテリーの電力が弱ることがあります。
※電圧だけではバッテリーの劣化はわかりにくいらしいけれど、素人ができるのは電圧チェックぐらいです。
ということは。
バイクで最も電力を必要とするセルモーターを回転させる力が弱まるということです。
そんなことでエンジンの始動がしにくくなるのです。
※二番目に電力を使うのはホーンですが最近は電子ホーンなので昔ほど負荷が高くないと聞くけれど。
エンジン始動時というのは、
というバッテリーには過酷な状態なのですよ。
※なのでアイドリングストップとかバッテリーに良い訳がないのです。
特に劣化して電力が弱ったバッテリーだとエンジンをかける際に必要な電力が十分に供給されなくなって始動性は悪化します。
劣化したバッテリーは明確に電力のパワーがダウンするのでエンジンの始動性が悪化するのです。
というわけで。
冬場のエンジン始動が鈍い場合、
混合気の調整の次に確認するのはバッテリーのコンディションです。

当倶楽部の冬のバッテリー置き場。
2台のバッテリーチャージャーを駆使して各バッテリーをローテーションで充電しまくっています。
1か月程度乗らない場合はバッテリーをバイクから外して充電しておくことです。
バッテリーは冬場に限らず、乗らない期間が長い場合は外すもんですよ。
最近のバイクは電子制御なのでバッテリーの状態が肝です。
日頃から充電状態を確認し、少なくとも電圧のチェックくらいはできたほうがよろしい。
出来れば冬場でも定期的に1時間程度はバイクを走らせてバッテリーに充電するのがベスト。
※まあ道路が凍って雪が積もる長野では無理なのですが。
なので。
エンジンの始動性が悪い場合、
混合気の関連チェックの次にやるのは「充電したバッテリーでセルを回す。」ことです。
冬にバイクに乗る頻度が低い人はバッテリーチャージャーを持っていて損はないです。
頻繁にバッテリーを買うより安上がりです。
最近のMFバッテリーに対応したトリクル充電器がおススメです。
※開放型バッテリーも充電できますし。
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エンジンがかからないからと言って、
セルボタンを長時間押し続けるとバッテリーがどんどん弱ります。
※さらにエンジンがかかりづらくなる、ということです。
普通は5秒も連続して回したらエンジンをかけるには十分です。
これだけでバッテリーへの負担を軽減できます。
長時間セルを回し続けてごらんなさい。
セルに向かう配線やセルモーター自体が熱を持ちます。
手で触れないくらいになりますよ。
※それだけセルはバッテリーの電力を消費してるってことです。
ちなみに・・
セルが勢い良く回ってもエンジンが始動しない場合、
適当なところであきらめて大人しくバッテリーを充電するのが得策なのですよ。
セルが回らないのは問題外ですがセルが回ってもバッテリーが弱ってるとエンジン始動しないことは良くあることです。
元気にセルが回るけれどエンジンが始動しない場合、
当倶楽部ではバッテリーチャージャーで一晩充電してみます。
※多少面倒くさいけれど、充電後は一発でエンジン始動!したりします。

エンジン停止時のバッテリー電圧。
12Vを切ったバッテリーは弱ってるということです。
充電すれば大抵エンジンが始動するようになるのですが、
劣化したバッテリーは電力を維持する時間が短いらしく、
車載したまま3日もたてばまたエンジンがかかりづらくなります。
こういう場合はサッサと新品に更新するのがストレスがないし無駄もないです。
※劣化したバッテリーを再生するのは時間と労力が無尽蔵にあればやってもいいけれど見合わないのでやらない。
容量が小さく使用頻度が低いバイクのバッテリーは3年持てばいいと考えておいた方がいいです。
年季の入ったバッテリーはサドンデスすることがあるので出先でどうにもならなくなるよりマシです。
特に乗る頻度が低く、乗る距離が短いと言った運用をしているとバッテリーの劣化が早まるので要注意です。
それに。
劣化したバッテリーを無理やり使い続けると、
レギュレーターやジェネレーターと言った大物が壊れるので要注意です。
結果としてバッテリーを交換したほうが安上がりなのですよ。
※セルがぎゅんぎゅん回ってエンジンの始動性がいいのは気分がいいしね。
ただし。
最近ネットショップで流行の安い中華の国のバッテリーは品質にばらつきがあるのは確かです。
実際に当倶楽部ではZ1-Rに搭載した中華の国製のMFバッテリーが、
出先で物理的に割れて内容液が漏れて大変なことになったというトラブルを経験しています。
コレは運というか一種の賭けですな。
山の中でバッテリーが死んだりすると怖いので最近は台湾製を選ぶようにしています。
※国産は信頼性と値段が高いので頻繁に買えないのです。
出来れば国産が無難。
海外製なら台湾製をおススメします。
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オイルの状態はどうなってる?
経験上、それほどエンジン始動には影響はないと思うのですが冬はオイルの粘度が高くなるのです。
エンジンが回転する際の内部抵抗が高まるとやっぱりエンジンの始動に影響が出ると言われています。
外気温が低いとオイルも冷えます。
外気温が低くなるとエンジンオイルの粘度が高まります。
ということはエンジン各所を潤滑しているオイルがスムーズに流れなくなるのです。
そのため、流動性が悪くなるので、エンジンを回転させる際の抵抗になるわけです。
また。
流動性が悪くなるとエンジン内部の摺動箇所の摩擦が増えます。
エンジン内部のパーツにダメージがあると言われています。
※暖気運転は低回転でゆっくりオイルを温める、ということなのよ。
粘度が高いオイルは当然エンジン始動時の抵抗が大きいのです。
その手の古いエンジンはキャブ車なわけですよ。
冬になるとエンジンがかかりにくくなるのですな。
ということは。
この手の車は冷寒時の始動性が良くないことが多いです。
かといって。
隙間の大きい古いエンジンに今どきのさらさらしたオイルを突っ込むと、
そこら中からオイル漏れするといったトラブルになりかねません。
するので粘度の高いオイルで油膜を維持することもあります。
※過走行車に少し粘度の高いオイルを使うとエンジン音が静かになることもあるのはこういうこと。
こういうのも旧車乗りのアイデンティティなのですよ。
※どんなオイルを使ってるか?という話題は旧車乗りの間ではポピュラーなネタです。

当倶楽部ではオイルはブレンドして使っています。
以前は小売りで単価の高いオイルを使っていましたが最近はペール缶で買っています。
その方が安い。
みんなでペール缶を一個買ってシェアすればいいのではなかろうか。
ワタクシの経験上、
冬になったからと言ってオイルの粘度がエンジンの始動に影響したことはありませんが、
鮮度の低い汚れたオイルを入れっぱなしよりは新しいオイルのほうがエンジンの始動性が良い気がします。
やっぱり新しいオイルのほうがエンジンがひゅんひゅん回るので抵抗が少ないんじゃなかろうか。
※この辺はプロがいると思うので解説は識者に任せたいですな。
まとめ
古いバイクでもメンテナンスがされている通常のコンディションであれば、冬でもエンジンはかかるのですよ。
現に当倶楽部の古い車やバイクは冬でもエンジンはちゃんとかかっていますし。
※10万キロ以上余裕で走ってるZ1-Rだってセル一発です。キュル・・で初爆がありますよ。アイドリングが安定するのはちょっと時間がかかりますが。
始動性が悪いバイクの場合、
何故エンジンがかからないのか?
原因を理屈を考えながら追究してみたらいいのです。
この手のトラブルシューティングはもっともお金のかからなくて面白い推理ゲームだと思っています。
場合によっては、
キャブ内のガソリンが減ってタンクから供給されるないまま、セルを回してるだけかもしれません。
これはガソリンコックの構造によります。

VT250FHの負圧式ガソリンコック。
ワタクシはVT250FHの負圧コックを他車流用して制した際に納得しました。
こんな記事もあります▼
せっかくフル防寒でバイクに乗ろうとしているのにエンジンがかからない。
そんなもったいないことがあるか。
※雪国からすると冬にバイクに乗って遊べる地域に住んでいる人が非常にうらやましいです。
当記事を参考にしてもいいししなくてもいいので、
エンジンがかかる理屈を理解したうえで対処するといいでしょう。
それが出来てこそのキャブ車乗りであり、古いバイクに乗る資格があるってものです。
エンジンを何とか始動させようと、試行錯誤するのはお金を出しても身につかない貴重な経験です。
みんなこういう経験をしながら、だんだんベテランライダーになってくのです。
流行で大金をはたいて念願の旧車を手に入れても、こういう所作ですぐ経験不足がでます。
エンジンの始動一つとってもキャブ車に乗り慣れてないのがよくわかっちゃうのです。
こういいう経験から来る所作というのは一朝一夕で何とかなるもんでもなし、
古いメカニズムのエンジンを搭載している乗り物はそれなりにハードルが高いのです。

Z1-R。シリンダヘッドまで外した状態。
別にここまでやれとは言いません。
でも最低限の知識と整備力がないと、ショップにぼったくられますよ。
※ワタクシでさえぼったくられた経験があります。
エンジン始動方以外にも旧車には、
「バイクをだんだんと自分のモノにしていくという楽しみ。」
があるのだけれど、
なんでもタイパとかコスパとか言ってる現代人には理解しにくいのかもしれませんな。
ちなみに・・
「エンジンがかからない。」
と騒いで結局バイクに乗らない人がいますな。
「エンジンがかからない。」
というのは乗らない言い訳の第一歩でバイクに飽き始めた人が言うことですよ。
エンジンがかからなくてもバイクに興味があるなら、
わからないなりに「ああでもないこうでもないと試行錯誤するもんだ。」と思うのですが、どうか?
それでも。
そういう場合、
現代人はすぐにネットで検索するのだけれど、
それなりに理屈がわかってないと適切な方法にたどり着くのは大変です。
「エンジンがかからない。」
ということだけ見ても原因は多種多様なのです。
問い合わせいただいても目の前にエンジンのかからないバイクがあるわけでもなし、
そのバイクのエンジンがかからない原因を言い当てて解決方法を教えてくれるなんて、
ベテランメカニックはもちろんAIにだってできませんよ。
古い車もそうですが、
バイクはある程度オーナーの知識や技量が問われる乗り物です。
同じバイクに乗ってる複数オーナーがいたとして、
1年乗ってる人と10年乗ってる人では経験値が段違いです。
なので。
話を聞くなら「出来るだけ長いことその車種に乗り続けている人から聞くのが正解。」です。
大抵の短期間のオーナーは実経験よりもネットや雑誌の知識のほうが多く、実践では役に立たないものですよ。
数年単位で運用して初めてバイクが自分のものになるのですよ。
※そういう連れ添った時間の長いバイクのことを「終のバイク。」と言う方がカッコいいのです。最後に買った新しいバイクではない気がしますな。
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