VT250F

【VT250F】負圧式キャブのダイアフラムを柔らかくする方法はないものか。

VT250F。ダイアフラム。

VT250F。ダイアフラム。

 

ワタクシ
VT250FHのレストアをしています。
負圧式キャブなのでダイアフラムと呼ばれるゴム製品でコントロールしています。
が。
ゴムも経年劣化するので硬化してしまうんですよ。
こうなると本来のレスポンスは望めなくなります。
ダイアフラムの軟化の方法、もしくは代替案を模索しました。

 

負圧式キャブレーターのダイアフラム問題

 

ワタクシ
2000年問題(古い)っぽく書きましたが。
キャブレーターのダイアフラム問題は中古バイクレストア業界で話題になってるっぽいのです。

 

当倶楽部で再生レストア作業をしているVT250FH。
このキャブのバキュームピストンが前後のシリンダで動きが微妙に違っているのです。

 

VT250F。バキュームピストン。

VT250F。バキュームピストン。


このピストンを指で押し上げて戻り具合を確認するのだ。

 

要するに、
「キャブレターボディの吸気側から指でバキュームピストンを持ち上げ、指を離した時に下がるスピードが前後のキャブで違う。」
ということなんです。

これでは全後のシリンダでバランスが取れませんな。
※キャブのバランスってすごく大事。特に低回転時はこの同調がものをいう。

その原因は、
キャブの内部にある「ダイアフラム。」という負圧をコントロールするゴムの幕が劣化して硬化していることが多いです。
ゴムが硬化すると、負圧によって動くキャブのピストンの動きが悪くなり、エンジンのレスポンス速度が低下するのです。

  • エンジンの回転上昇が遅い
  • エンジンの回転降下が遅い
  • 酷いとアクセル戻してもエンジンの回転が下がらないなんてことも。
    ※まあ普通はアイドリングからちょっと開ける位置でレスポンスが超悪いのですが。

    こんな状態ではまともに走れません。

    負圧キャブ

    「負圧キャブ。」はファジー(古い)なキャブとして一世を風靡しましたね。
    80年代に入るとどのメーカーもこぞって負圧キャブを採用し始めます。

    その理由は、

  • スゲエ適当なセッティングでもそこそこ走れて
  • 燃費が良くて
  • レスポンスが鋭すぎないので素人に優しい
  • 夢のようなキャブです。
    ※良くも悪くも「一瞬考えるキャブ。」と言われていました。

     

    セロー225。単気筒のバイクはキャブの勉強に最適

    セロー225。単気筒のバイクはキャブの勉強に最適


    当時はオフ車ももちろん負圧キャブを採用してたりします。

     

    キャブレーター時代の末期は、4stバイクの気化器は単気筒からマルチエンジンまでほぼ負圧キャブ搭載車になったという記憶があります。
    ※それくらいセッティングが楽。

    ワタクシは、神経質な強制開閉キャブより適当に緩い負圧キャブの方が公道では 気楽なので 楽しいと思う人です。
    中には強制開閉絶対主義者も知っていますが、それはそれ。
    人はそれぞれ 人に迷惑かけない限り どんなものを好きになっても良いのです。

    そんな「負圧キャブ。」ですが。
    適当でいいという「人に優しい(古い)商品。」は、同時にユーザーはノーメンテでいいという勘違いを生みます。
    その結果、キャブがとんでもない状態になってる中古車両も多いのです。

    古いバイクに乗る場合、初期化作業の一環としてキャブのダイアフラムのメンテもしくは交換は普通のレストアメニューなのです。

    駄菓子菓子。

    2023年2月現在。
    メーカーを問わず、多くの負圧キャブ搭載車のダイアフラムのパーツ供給状態は極めて悪いと言っておきましょう。
    ※在庫があるだけでもラッキーです。高価でも買っておく価値があります。ただし、4気筒なら4個必要です。

    ゆえに、
    キャブ車の再生は非常に難しくなりつつあると言ってもよろしい。

    ものすごい人気の名車バイクならパーツをリプレイスしてくれるサードパーティがあるかもしれませんが、
    それほどでもない普通のバイクではパーツをリプレイスなんて望めないのです。

     

    Z750D1。キャブ単体でのオーバフローテスト中。

    Z750D1。キャブ単体でのオーバフローテスト中。


    当倶楽部では全車両大体2年に一度くらいキャブを清掃して調整しています。

     

    「負圧キャブのパーツが入手できないため、またバイクが一台この世から消える。」
    ということにもなりかねません。

    もちろん、
    当倶楽部でレストアしているVT250Fシリーズは累計20年以上つくられたハズなのですが、
    メーカー純正としてのダイアフラム(バキュームピストンと一体型で高い)はすでに入手不可能です。

    中古はそこそこ流通していますが、それこそ穴が開いてたり今持ってる奴より程度が悪い可能性も高いので賭けなのです。
    ※大体こういう中古パーツは再生できないレベルのとんでもないボロイ解体車からもいでくるのが普通だし、程度も悪けりゃ値段も高い知識ない転売ヤーが出品してることが多い。

    うむ。
    さてどうしたものか。

    あとで分かったこと 

    すごい情報を入手しました。
    作業後にわかったことですがVT250系のキャブはサードパーティ製の新品が手に入るらしい。
    お金に余裕があるならこれ買った方が早いかもしれません。
     毎晩豆腐二丁(一丁40円くらい)が夕飯な 当倶楽部にはそんな財政的な余裕はあるわけないのですが。


    2023/03現在、少なくとも楽天売られているのを確認済。
    中華製ですかね?
    最悪これを調達するという方法もある。
    でもいつまであるかわからないのもこの手のパーツ。
    悩ましい。

     

     

    ちなみに・・

    最悪、ダイアフラムが硬化したり破れたりした場合、「強制開閉式キャブへのリプレイス。」もできないことはないのです。

    が。
    ほとんどレース用みたいなとんでもない高価なアイテムであるし、セッティングは困難を極めます。
    ※一生それにかかりっきりになる可能性大。

    ワタクシなら、公道を走るバイクには絶対レース用キャブは使いません。

    そもそもレース用とが前提のものが多く、エアクリーナーは付きません。
    当然、雨天や未舗装キャンプ場へ侵入は遠慮したくなりますし。
    そもそも標高が変ったり、悪天候になったりするとツーリングが面白くなくなるし。

    「レース用の強制開閉式キャブへのリプレイス。」
    ははまると抜け出せない魔界への扉に近い。
    最後の砦かもしれませんが極力避けたいのが本音です。

    ダイアフラムにシリコングリスを塗りたくる

     

    ワタクシ
    ワタクシは盲目的に「ゴム製品にはシリコングリス!」と思い込んでいる節があります。
    それである程度はゴムの特性も復活すると。
    当然ダイアフラムにもその手法を踏襲します。

     

    うむ。
    実際薄く塗布して時間をおいてみましたが、その思い込みは思い違いでしたな。

    何もしないよりははるかにマシですが、新品時のゴムの弾力性能は全然取り戻せません(笑)

    当たり前だね、わっはっは。

     

    「シリコングリス」はゴムを傷めず保護しつつ動きをよくします。
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    高いのでけちけち使ってしまう自分が情けない。

     

    とはいえ、
    VT250Fの入手当初はキャブとバキュームピストンが固着してたわけです。
    それから比べるとリ・ガズィとνガンダムくらい動きには差があります。
    ※少しでもいい方に考えようとするワタクシは 欲をかくと よく人に騙されるタイプです。

    それでも次の手段を模索します。

    ちなみに・・

    メンテされて保管状態の良いバイクならダイアフラムには定期的なシリコングリスの塗布で十分と思っています。

    ワタクシは20年以上Z1-RとZ750D1にゼファーの負圧式CVKキャブを搭載していますが、それ以外のメンテはしたことないです。
    ※動きは多少悪くなってるかもしれませんが十分なレスポンスを確保していますよ。

    数年に一度、キャブの内部清掃の際にシリコングリスを薄ーく塗りたくるのですが多少グリスっぽさが残ってる感じすらします。

    ワタクシはゴムパーツのメンテと言えば、シリコングリスだと思っています。
    ※シリコンスプレーも結構効果ありです。何もしないよりはるかにマシです。

    間違っても、ゴムを劣化させる系のグリスを使ってはならないのです。
    ※安い万能グリスとか使うとゴムがぶよぶよに変質しますよ。

    KUREラバープロテクタントに浸ける

     

    ワタクシ
    ゴム製品の性能保持では第一人者でしょうねえ「KUREラバープロテクタント。」は。
    ワタクシもこれ以上の製品は知りませんし。

     

    「KUREラバープロテクタント。」の商品仕様にはゴムの劣化を防ぎ、とある。
    さすがのCRC-556のKUREです。

     

    KUREラバープロテクタント

    KUREラバープロテクタント


    最近までラバープロテクトだと思ってた。

     

    が。
    劣化したゴムを再生、とは一言も書いていない。

    うむ。
    でもやらないよりマシです。

    ゆえに、
    普通は「KUREラバープロテクタント。」をスプレーするだけなのですが、ちょっと多めにバットに液体を出してそれにダイアフラムを浸けて数時間放置してみました。

    なんかちょっと柔かさが戻った気が(笑)
     多分プラシーボ効果だと思うのですが ワタクシ個人の感想です。

     

    VT250F。ダイアフラム。

    VT250F。ダイアフラム。


    純正ではバキュームピストンと一体でしたパーツが出なかったらしく、すごく高い。
    ※もちろん2023/03現在は欠品です。

     

    組んでみたところ、ちょっと動きが良くなった気が♪
    ピストンとキャブボディが擦れる箇所にはシリコンスプレーを大目に吹いてあります。

    なんかちょっとマシになった気が♪
     多分プラシーボ効果だと思うのですが 引き続き、ワタクシ個人の感想です。

     

    ゴムの保護剤。ラバープロテクタント!
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    最近は大きめのホームセンターなら普通に扱ってるのでありがたい。

     

    真冬の外気温3度以下でやってるのでゴム自体が固くなりがちなのは仕方なし。
    もしかしたら夏は復活するのかもしれませんが。

    ゴム製品をお湯で煮るのはアリなのか

     

    ワタクシ
    ネットで得た情報ですが「ダイアフラムをお湯で煮る。」という方法もあるようです。
    気長に予備パーツが入手できた際にはやってみようかと思います。
    ※これ一個しかないのにその勇気はないですぜ。

     

    確かに夏はゴム製品は柔らかめになりますね。
    温めることでゴムを構成してる物質の結合が少し緩くなる?でいいのかな。

    ともあれ、
    夏と冬ではゴムの柔かさが違うことは実体験として知っていますしね。

    ただし、
    一時的に柔らかくなるだけなら意味がない訳ですし。

     

    最近行ったカフェのランチ。

    最近行ったカフェのランチ。


    当記事の絵面が全体的にすさまじく地味なので美味しそうな画像を載せておきます。

     

    他のゴム製品でやってみようかとも思いますが、ゴムの材質はそれこそ化合物の割合で星の数ほど種類があるらしい。
    相性的な問題もありそうです。
    やっぱり何かの負圧キャブのダイアフラムを犠牲にしてやってみるのが良いかもしれませんな。

    ゆえに。
    今回は 怖いので ダイアフラムを鍋で煮るという手法はやらないことにします。
    ※鍋の底に焦げ付いたりでもしたらシャレにならんし。

    ちなみに・・

    当倶楽部のガレージには少なくとも3基のゼファー用(一個はボディが黒いので何用か不明。)キャブがあるのです。

    当倶楽部のZ用ストックキャブたち。

    当倶楽部のZ用ストックキャブたち。


    部品取りにもなるし、予備にもなる。
    あと構造を再確認するときも有効。

    ワタクシの長年の収集癖によるものなのですが、それに入ってるダイアフラムを使って煮てみますかね。
    ゼファーのキャブには新品のダイアフラムもストックがあるし。
    ※当記事ではあくまでも簡易的なダイアフラムを柔らかくする手法を模索するという趣旨です。

    っていうか、
    「ダイアフラムを柔らかくするならこういう手法があるよ。」
    って人がいたら教えて欲しいものです。

    まとめ

     

    ワタクシ
    今現在は「KUREラバープロテクタント。」で漬けておくのが一番柔らかくなった 気がする という結果。
    前後のキャブで同じくらいの動きをするようになったので、とりあえずこれでエンジン始動までもっていきます。
    ダメならまた「KUREラバープロテクト。」より、いい方法がないか模索しつつ、解決策を探し続けます。

     

    今のところ、ダイアフラムの軟化には「KUREラバープロテクタント。」がベストでした。
    ※今後の保護のためにも、シリコングリスを薄く塗りこんでおきました。

    とはいえ、
    これも劣化の度合いに寄るのかもしれません。

    もう少し長期的にいろいろと模索して見ることにします。
    ※海外文献にはありそうな気配がしますな。すべて 趣味ですが 勉強なのです。

    ついでにキャブの口径が合う車種を探して流用する方法も模索して見ようと思います。

     

    VT250F。ガソリンコック。

    VT250F。ガソリンコック。


    実はVT250シリーズはガソリンコックにもダイアフラムがついているのだよ。
    負圧でガソリンの流れを制御してるのだ。
    まいったね。

     

    恐らく日本中には現時点でもダイアフラムで困ってる人が多く存在すると思うんですよ。
    これから困ってる人はもっと増える可能性がある。
    ※車でもHONDA S800とか負圧キャブだったような。どうしてるんだろ?

    古い車やバイクにフォーカスが当たってる現在です。
    キャブのダイアフラムがあれば買う人は一定数いるように思います。
    今ならダイアフラムの型を取れる生きてる個体もギリギリ存在してる、ということもありますしねえ。

    これはビジネスチャンスですよ、母さん。

    「ダイアフラムを制作する。」
    という工場が出て来てくれないかしら?

    何でも人任せなのもよろしくないですが、ゴム加工の第一人者が立ち上がってくれると 楽出来て とても嬉しいですなぁ。

    実際にワタクシの愛読書「オールドタイマー誌。」でもゴム製品の欠品で苦労してる人は多いです。
    ※あの雑誌に出てくるような人は 大体変態かどこかおかしい 努力家なのでゴム製品を自作したりするので支障はないのかもしれませんが。

    ワタクシは
    「件の雑誌の猛者のレベルまではやりたくはないのですが尊敬はしています。」
    というのが正直なところです。

    ちなみに・・

    真面目な話、負圧キャブ搭載のバイクに乗ってる人、焦ったほうがいいですよ。

    ダイアフラムは劣化して破れたりすると最悪そのまま廃車です。
    どんなに高額で手に入れた中古車両でもそれは起こりうるのです。

    負圧キャブの歴史は意外と古く、
    KAWASAKIの第二世代のZシリーズ(Z1000Jとかね)は既に負圧キャブ化されてるし、大人気の空冷4発16バルブ系の車種も負圧キャブです。

    80年代前半には既に負圧キャブの時代がきて、急速に強制開閉キャブのシェアを塗り替えていったのです。
    もちろんその後のレプリカ系ですら負圧キャブ搭載車は多いです。
    ※2stは強制開閉が主流でしたが。

    つ・ま・り。

    高いお金を支払って、古いバイクを買ってもダイアフラムに異常をきたせば楽しく遊べなくなるのです。
    なにせ「重要な補修部品が手に入らない。」ので。

    そして、
    ゴム製品は扱いが悪かったり保管が悪かったりすると、わりとすぐに硬化したり破けたりするのです。
    こうなると走れたもんじゃない。

    長く乗るつもりがあるならすぐにでもメーカーに問い合わせて、自分のバイクのダイアフラムの在庫確認をしておきましょう。

    出来れば純正品を確保したいところですが、
    「とんでもなく高価。」
    になってることも多く、おいそれと手を出せないのが現状ですね。
    ※こういうパーツを転売ヤーが狙うんだろうねえ。相変わらず人の足元見やがるな。

    純正品でなければ4つ分キャブのセットでも安い。当倶楽部でも一応ストックしています。
    created by Rinker

    人気車ならサードパーティ製のリペアキットが出ている。
    でもいつまで売ってるかわからない。

    レストア作業からバイク業界のいろんなことがわかってきます。
    定期的にボロいバイクを直すと、いろいろ考えさせられることが多くて知見を広めるには良いのです。
    時には「ヤバイ・・。」と思うこともありますがそこは勇気と知恵と工夫で勝負していくのです。
    人生を切り開くって、こういうことですよ♪

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    Z1-Rに乗り続けて30年
    東京から長野に移住して15年
    ロータスヨーロッパに乗り始めて10年
    そんなワタクシのリアル実体験「北信州のりもの倶楽部。」です。
    車・バイク共に旧車生活の長さや田舎への移住経験、気が付いたことを記事にしています。
     使えない&くだらない 知識量には自信があります♪

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