シートの中身の黄色いスポンジが出てるとダサいのです。
でもほんのちょっとなら・・張り替えるのはもったいない。
というわけで、裂けた部分を革細工用の針と糸で縫ってみました。
これはこれでいいかな、という感じです。
当記事の目次
バイクのシートが汚いと貧相
とにかく、バイクを構成するパーツの中で目立つ存在です。
これが汚いとバイク全体がダサく見えます。
バイクのシートってすごく重要な位置づけなのです。
バイクに乗ってる時はそれほど気にしませんが、バイクから離れると以外に目に付くのがシートです。
バイクのシートは構成するパーツの中でも目を引きがちな重要なパーツです。
例えば、
シートを車体から外すだけでもバイクは未完成感な印象になります。
シートは物理的に大きいし目に付きやすい。
ゆえに車体のイメージを左右する重要なパーツです。
なのですが、
ライダーは意外とバイクのシートに無頓着です。
マフラーは交換してもシートを加工する人はそう多くはありません。
モンキー系とかSR系とかの改造主体のバイク以外はリプレイス用のシートはあまり売ってませんし。
なので、
多くのバイクは純正そのままのシートを使っているはずです。
これが10年20年とたつとやっぱり表皮が痛みます。
バイクはシートがボロイと全体が貧乏っぽく見えるのですよ。
特にちょっとでも表皮が裂けて中身の黄色いスポンジが見えると一気にボロく見えるものなのです。
ちなみに・・
当倶楽部のZ1-Rのシートはワタクシが欧州から輸入したデッドストックものです。
少なくとも25年以上前、5万円以上しました。
※いまはもっと高いだろうけど、購入当時は清水の舞台でカラオケ歌うくらい勇気が必要な金額でした。
なにせ新品シートです。
しばらくは超ご機嫌で気持ちよく乗ってたわけですよ。
その当時は東京都新宿区に住んでいました。
バイクはカバーをかけて保管していました。
が。
野良猫がシート内に入り込んで新品シートで爪を研ぎまして(´;ω;`)
それも何度も(´;ω;`)
破れこそしませんでしたが表皮がボロボロに。
該当する野良猫にはそれなりの天誅を下しました。
※東京のマンションは野良猫騒ぎの他いろいろあってバイクを置く場所じゃなかったな。
爪痕はそのまま5年くらい乗りましたがシートを見るたびに悲しくなりました。
シートは乗るたびに目につくのでやっぱり綺麗な方がいいのです。
殺意が沸く、ということがどういうことか思い知った瞬間です。
危うく闇に落ちる所でしたわ。
当時は張替え=純正シートの模様が無くなる、
というのが普通でしたので業者に張替えに出すこともしませんでした。
※お金もなかったし。
後に現在使用しているレース用の段付きリプレイスシートに変更したのですが、
当時砂を噛むような思いで入手した純正シートには思い出があるので今でも表皮が爪研がれたままの状態で持っています。
※車検の時は文句の出ないようにタンデムベルトが付いているこのシートに変えています。
バイクのシートは破れます
正解が楽で加工が楽、安価で耐久性も高いのでメーカーが使いたがるのも分かります。
バイクのシートの素材であるビニールレザーは屋内用や装飾用のビニールレザーと比べると驚異的な耐久性と耐候性を持ちます。
※一応、屋外用のビニールレザーというのもあるにはあるのですが。
とはいえ、
シートはバイクを構成するパーツの中でも、
ので、
どうしても経年劣化で割けたり切れたりするのです。
また、
転倒時に擦り切れたり、ライダーの不注意で引っかけたりすることもあるので交換されることも多く、メーカー純正品は割と欠品になりやすい。
※傾向としてメーカーストックは外装からなくなるものですよ。
なので、
旧車のバイクのシートは傷んでることが多いのです。
※旧車のバイクをレストアする際にはシートの補修は大抵やらねばならない必須作業です。
ワタクシ個人の印象ですが新しいバイクほどシートの表皮は薄目でなんとなく脆い印象があります。
※軽くて薄くて文句はないんですが。
VT250FHの純正シートには薄いビニールレザーが使われています。
当倶楽部の個体はシートの先端部のタンクとの境目辺りで5cmほど切れてスポンジが見えている状態でした。
破れたシートの写真は過去に一枚も撮ってないのでした。
※心の目で見るとタンクとシートの境目が切れてるのがわかるんですがね。
経年劣化的に仕方がないことなので、文句はありません。
むしろ35年以上もこんな薄い表皮でよく頑張ったな、くらいに思います。
このまま走るとシートのスポンジが吸湿して中でカビたりスポンジが劣化してボロボロになるのは目に見えています。
※なぜかワタクシが単独でVT250FHでツーリングに出かけると9割以上の確率で雨に降られるのです。
じわじわと引っ張られていくので裂け目が広がっていくのも時間の問題ですし。
とっととシートに破れの対応・対策をしなければなりません。
シートの破れ対策はVT250FHを入手した時からわかっていたけど後回しにし続けた「夏休みの課題。」的な問題なのです。
ちなみに・・
メーカーや時代にもよりますが 高級な バイクのシートの表皮は専用設計で立体裁断されているものが多いです。
これによりシートベースにスポンジを固定してシートの表皮でくるんでもたるまないのですよ。
古いバイクのシートの表皮を綺麗にはがすとしっかり立体的なシートの形になってたりするものです。
※古いバイクのシートは明らかに厚手でがっしりしています。
ところが。
VT250FHのシートの表皮は立体裁断されてないっぽいのです。
剥がしてみれば一発でわかるんですが、今回は剥がしません。
シートの裏側を見ると見えないところは無理やり折りたたんでタッカーで固定したように見えます。
※立体裁断やシートに合わせた裁断は 歩留まりが悪いので コストカットしたいメーカーとしては取りたがらない贅沢な手法です。
VT250FHのシート表皮のビニールレザーは薄っすいしねえ。
明らかなコストダウンですな。
VT250FHはエンジン以外は結構コストカットされてる作りなのが微笑ましい。
立体裁断されていないビニールレザーをシートに張る際は表皮はしわが寄らないように思いっきり引っ張ってタッカーで固定します。
ので、
どうしてもシートの表皮が固いシートベースと直接あたる箇所が集中的に擦れるんです。
そのため、
どの個体も同じような箇所が擦り切れたり破れたりして穴が開きがちです。
シートに穴が開いたら普通は張り替える
最初は今回はプロに頼もうと思ってたのでネットで検索してみました。
さすが今どきのシート屋さんですな。
ネット経由でオーダーシートに記入するだけでシートの様々なカスタマイズが行えるようです。
シートのカラーはもちろん、中の素材や表面加工もいろんなコースがあって割と明確な金額を提示されます。
オーダーシートに記入後、シート屋さんからの返信を待って、
バイクのシートそのものをシート屋さんに送れば、施行後に着払いで送り返してくれるようですな。
VT250FHのシートの低さは 女子供や体力のない中高年には 素晴らしいのですが、ワタクシ的には低すぎます。
どうせプロに頼むならシートにスポンジを追加してあんこ増し(あんこ盛り)をして欲しいと思っていました。
ですが完成時のイメージを伝える方法を悩みました。
というのも、
前述したようにシートってバイクの印象を思いっきり変えるのです。
シートのボリューム感はスマートなVT250FHのイメージを大きく変えちゃいそうです。
一概にシートのスポンジを抜くあんこ抜きがカッコいいとは思いませんがネットでは依頼しやすい。
逆にシートのスポンジを追加するあんこマシはネットで依頼するのは難しいのです。
格好悪いバイクに乗り続けるのは苦痛ですし。
ゆえに、
シート屋さんと直接話をしてあんこマシの加工を依頼したいと思いました。
ところが。
長野県内にはバイクのシート屋さんなんてないのでした。
※それどころか半径100km以内にはバイクのシート加工をしてくれるところはなさそうです。
そして、
ワタクシの想像以上にシートの表皮の張替え金額が高いのでした。
素晴らしい技術と表皮のクオリティを考えれば決して高くないと思うのですが表皮の張替え+あんこマシで3万円以上するとなると躊躇しますな。
シート表皮の張替え+タンデムベルトの張替えでも送料を含めると1.5万円では全然収まりませんし。
※昔は送料込みで1.5万円くらいだった気が。
別にタックロールとか要らないし、滑り止めのディンプル加工も、腰痛対応の低反発ウレタンも要らないのです。
珍走団のようなエナメル加工もリブ加工も三段シート加工ももちろん要りません。
※この手のシート加工の需要っていまだにあるようでビックリです。
当倶楽部にはいつだってお金はないのです。
※暇もないけど。
たかがシートの5cmくらいの切れ目を何とかしたいだけなのですが数万円というのはコスパが悪すぎるのですよ。
ちなみに・・
バイクのシートのスポンジを加工するのは至難の技です。
というか、素人はやらない方がいいレベルで無理です。
やってみりゃわかりますが素人がやっても全体的に均等に削れませんし、均等に盛れません。
加工中は部屋中がスポンジの削りカスでいっぱいになります。
オマケにスポンジを削ったり盛ったりした分のシートの表皮は余ったり足りなかったりするのです。
そんな状態のシート表皮を皴をつけずに張り替えるなんてほぼ無理ゲーなのです。
※表皮を古いまま再利用しようとするならなおさらです。
こういう加工はお金を払ってもプロに任せるべきなのです。
ワタクシの師匠が言うには、シートのスポンジを削るならシートベース側を削る方がリスクが少ないと言ってました。
※盛る方法は教えてもらってませんが。
もう一回書きますが、こういう加工はプロに任せるのが一番なのですよ。
エアタッカーなんて普通素人は持ってませんし。
これがないと作業がはかどらず、どんどん泥沼化します。
経験上、ホームセンターで売ってる建築用の安いタッカーはバイクのシートベースには文字通り歯が立ちませんよ。
※あれは断熱材が入ったビニールを壁に取り付けるための工具です。
貧乏人は自分で何とかする
これなら何とかできそうな気もします。
実際、セロー225Wのシートはワタクシと師匠が一緒にやったわけですし。
※こういう考え方は抜き差しならない状態に陥ることになりがちなのですが。
というわけで、シートの張替えを自分でやる方向でも一応検討しました。
驚いたことにいまでも社外品のVT250FHのシートの表皮って結構売ってたりします。
※年間何枚売れるんだか知りませんが。
ただし、
表皮だけで1万円以上するので却下です。
実際バイクのシートを自分で張り替える人は多いです。
やることは単純なのですが、コツがあるしそれなりの道具を揃えないと全く歯が立たないのですが。
大抵、素人張替えのバイクのシートはしわが寄ってて 貧乏くさい みすぼらしい印象なので一発でわかっちゃうのです。
※当倶楽部のセロー225Wのシートは師匠のご指導と立会の元で作業したのでかなりいい線で仕上がっていますが稀な例です。
こんな記事もあります▼
そして、
師匠に借りたエアタッカーは返しちゃったので再度送ってもらわねばなりません。
もしくは埼玉迄取りに行くか。
そんなことしたら 絶対飲まされるので その日のうちに帰宅するのは100%不可能です。
これも面倒くさい。
なんだかシートの張替え自体が面倒くさくなってきました。
が。
いろいろ考えた末、ちょっとした妙案を思いついたのです。
ちなみに・・
ホームセンターで見つけた「バイク&自転車のシート破れ隠しテープ。」というものがありまして。
耐久性は高そうなテープでしたが、いかんせん表面のテラテラ加工が浮きまくります。
また、ビニールレザーというよりフィルムっぽい質感なのでバイクにはどうかな、と思っちゃいました。
一応、貼ってみたのですが色的にも素材的にも浮きまくりでしたので却下です。
こういう散財は経験値なのでヨシとすることにしています。
何事も実体験で学んでいく姿勢が大事なのです。
と、いろいろ言い訳して見たもののこのような牛丼一杯分くらいの散財でも少し凹むワタクシなのです。
とまあ、今回の記事に至るまで紆余曲折あったのでした。
シートの破れは縫えばいい
破れてる箇所と言っても5cm程度です。
しかも目立たないタンクとの境目付近だし。
呆けていても何も進まないのでシートを車体から外して実物の見分をしてみます。
切れ目付近のシート表皮を引っ張ると切れ目がぴったりと接合するじゃないっすか。
※引っ張られて裂けめが広がってたので穴に見えただけでした。
こうなると 金銭的な問題は置いておくとしても シート自体を張り替えるのがもったいなくなってきます。
簡易的な接着は無理としても縫合ならできそうです。
よく考えたらワタクシには革細工という 下手の横好き的な 特技があるのです。
幸い革細工用の丈夫な黒い蝋引き糸のストックもありますし♪
雪の降りしきる冬の長野の室内作業としてはもってこいです。
駄目ならプロに依頼してシートを張り替えればいいのです。
条件は揃った。
というわけで、バイクのシートの縫合作業をやってみることにします。
ダメなら お金はないですが プロに頼んで張り替えてしまえばいいのです。
縫合作業は10分で完了
あっという間に終わりました。
シートの破れを引っ張って軽くパーツクリーナーで表皮を清掃します。
引っ張った状態で裏に接着剤を薄く塗付。
面で接着しておくことで古くなって脆くなってるビニールレザーの表皮の縫い目に点で負荷がかかって裂けるのを防止します。
この時点で裂け目がぴったり合うようにして革細工用のピンチで複数個所固定します。
一応、接着剤が固化するまで一晩置きました。
縫い方は革の端同士を突き合わせて縫う野球の球の縫い目で有名な「ベースボールステッチ。」です。
※バイクのキーの頭を革で作った時にやった手法です。
こんな記事もあります▼
表皮の劣化を考慮して縫い代に十分余裕をもって縫い上げていきます。
普通は引っ張ってテンションを張りながら縫うんですが引っ張りすぎると破けそうなので慎重に。
最初の一針はやっぱり緊張しますな。
それと、
革細工の場合は革素材に菱目状の下穴をあけて縫い合わせていくのですが今回は下穴なしの一発勝負です。
※下穴をあける工具が入らないし、ビニールレザーなら本革と違って針で貫通させられるし。
工程も折り返しを過ぎました。
普通縫い目の間隔は下穴に依存するため、均等になって綺麗に仕上がります。
ただし、
フリーハンドで縫うとなるとそうもいきません。
ビニールレザーの性質上、何度も縫い目を変更すると脆くなるので慎重に一針一針縫っていきます。
だいぶ進んできました。
縫いあがった後は慣らし棒で縫い目をこすって糸の盛り上がり分を平常化しておきました。
縫い合わせにかかった作業時間は10分もかかっていません。
というわけで出来たのがコレ。
遠目には全然わかりません♪
※裂けて黄色いスポンジが目立ってたのとは雲泥の違いです。
これでいいじゃん♪
材料代は当倶楽部のガレージに合ったものなのでゼロ。
ワタクシの手間だけで出来ました。
ついでなので、
ビニールレザーの表皮は全体的に呉ポリメイトで保護しておきました。
新品同様、とまではいきませんが、それなりに見られる状態になりました♪
※タンデムベルトの色あせが目立つのですがこれも自作するかなぁ。
まとめ
裂けた場所や大きさにもよりますがかなりしっかり仕上げることも可能です。
バイクのシートは、
のであれば縫合して見るのも手です。
最終的には自分がどこまで許せるか、という基準に寄るのですが今回の場合は大成功と言ってもいいでしょう。
遠目には全く目立ちませんし、むしろワタクシだけが知ってる補修箇所があるという愛車っぽくなって満足です。
※変死体の歯形で個人を特定できるようなもんですな。
惜しむらくは、
「切れた個所から切れてない反対側迄同じように縫ったら模様になったかもしれない。」
ということですな。
わざわざ縫い目の模様をシート表皮にプリントしてるバイクもあるわけで、
シートの補修のついでに縫い目を生かした表皮デザインにするのも面白そうです。
なにせ「リアル縫い目。」なのでプリントとはリアル感が違います。
これはこれでありかもしれませんな。
※しっかり防水加工しておかないと縫い目から水が侵入して中でカビそうですが。
どうよ?
車体にセットしたらほぼ全く目立ちません。
「こういうもんだ。」と強く言い切れば「そうかもしれないな。」と納得するレベルで仕上がりました。
最後は気合で押し切ればなんとかなるのはブラック企業に教えてもらいました。
いつものように 崖っぷち作業でしたが失敗しても元々張り替えるつもりだったわけで惜しくはありません。
それなら思い切ってやってみたいことを試してみればいいのです。
革細工用の針と糸なんて新たに買っても1000円もしませんし、バイクに乗れない冬の暇つぶし作業としては非常に面白いと思います。
今回もいい経験になりました♪
良いアイデアは思考の中から生まれるのですなぁ。
※そんなたいそうなもんではないのですが。
バイクのレストアは自分の持ってるスキルをフルに活用するのでホントに脳みそフル回転です。
中高年のボケ防止にはとてもいい趣味だと思うのですが流行るといろいろ面倒なので限られた人だけやればいいかな、と思っています。