遊びは要らないっていう人もいますが、まあそれは自己責任で。
遊びには意味があるのですよ、理屈を理解すれば結構大事な事がわかります。
今回はワイヤーやケーブル、配線などの遊びについて書いてみました。
ワイヤーの遊びは不要という人もいるけれど
今でも多くの乗り物はワイヤーで操作しているものが多いのです。
ワイヤーの遊びというのは、
「動かしても力が伝達しない可動量のこと。」
です。
バイクで言うと
などがこれに当たります。
ワイヤーで接続されている意味を考えればおのずと遊びの重要さがわかるというもの。
であるということです。
バイクの場合は、
その両方であることがほとんどなのでおのずと遊びが必要になるわけです。
油圧のブレーキ系の遊びはレバーやペダルがマスターシリンダーのピストンを押す迄なのですが、
調整は簡単じゃないので当記事では割愛します。
※油圧ブレーキの操作はレバーやペダルの位置で調整することが多いです。
これを踏まえて。
バイクのアクセル(スロットル)のグリスアップやワイヤーの張りを調整する際、
「スロットルの遊びは最低限にする。」
という人がいますね。
なんでも、
「レスポンスが悪くなる。」
ということが理由だそうで。
・・レスポンスというのはワイヤーを介して気化器(キャブなど)が動いてからのエンジンの反応速度とか追随性のことで、
スロットルグリップの遊びの問題ではないと思うのですがどうか?
逆に遊びが操作に対する反応の間というか溜めみたいなものを与えてくれて、
乗り手が次にくる挙動にたいして身構えることができる方が扱いやすかったりします。
その結果、
「一瞬考えるキャブ。」と言われて嫌われることもある負圧系キャブですが、
実際には素人にも使いやすいので市販車に幅広く使われているわけです。
※レースに使うなら強制開閉式キャブの方がいいとは思いますが。
人というのは意外と突然の唐突な動に対して反応できないものなのですよ。
※あくまでもワタクシ個人の意見です。
まあ、いい。
実際に遊びを無くして見ればわかりますが、
操作系のワイヤーの遊びが全然ないのは危ないのですよ。
遊びがない状態でハンドルを切るとエンジンの回転数が勝手に上がったりします。
バイクの場合ハンドルにアクセルが付いていますのでハンドルを左右に切った際に、
して、
「ハンドルを切ると勝手にアクセルが開いちゃう。」
「ハンドルを切るとアクセルを開けても反応しない。」
というライダーの意志とは違う動きをするわけですよ。
この現象は特にUターンなどでフルステアする場合に顕著でして。
ただでさえバランス崩しがちな極低速でのフルステア時です。
勝手にアクセル開いちゃうとバランス崩してコケたりしがちです。
※ゆえにジムカーナマシンはフルステア時を基準に遊びがないように調整されてたりします。
クラッチワイヤもそうですよ。
フルステア時に勝手にクラッチが切れてごらんなさい。
バランス崩しがちな極低速でのフルステア時に勝手にクラッチが切れちゃうとバランス崩してコケがちなのです。
※アクセル開けてバイクを起こすことができないわけで。
バイクというのは構造上、左右に大きく振れるハンドルに操作系が付いています。
どうしてもその分を見越したフリーな可動域=遊びが必要なのです。
そして、
遊びは車のアクセルペダルのように固定してあって、
操作の折にワイヤーの張りが変わらない場合でも有効です。
パツパツに張ってあるテンション常にかかってるワイヤーは寿命が短く、すぐ切れるんですよ。
ワイヤーだって金属疲労するし、なんども擦れれば切れやすくなります。
※ワイヤーがほつれてきたら速交換した方が身のためですよ。間もなく切れる合図ですので。
遊び部分は可動域のテンションの張りに対するちょっとした逃げにもなるのです。
ゆえに。
ワイヤー類の遊びは絶対に必要なのです。
ワイヤーは遊びがあったうえで、適度にグリスアップすることで長い期間使えるんですよ。
※ワイヤーにストレスがかかってると割とあっさり切れますよ。
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操作系のワイヤーの遊びの量はオーナーの好みで調整すればいいんですが、
あんまり遊びが大きすぎると操作しても伝達できなくなるので大概にしておきましょう。
操作系の遊びの調整は、バイクを買ったら真っ先にやることだと思いますよ。
手の大きさはみんな違うわけだし、アクセルやクラッチの操作系の好みもみんな違うんだし。
この手の些細な調整だけでバイクの操作のしやすさの印象が変わるのです。
※こういうのを「チューニング。」というのよ。
ちなみに・・
ついでなので、
バイクのチェーンの遊びの話も書いておきます。
チェーンはかなり強度が高いパーツですが必ず伸びます。
※経験上、全体が均一に伸びるわけではなく局所的に伸びるようです。
伸びたチェーンはじゃらじゃらと不快な音がするだけでなく、
最悪スプロケから外れたりしますのでチェーンの張りの調整(遊びの調整)をする必要があります。
通常、チェーンの輪の下側中央部を指で押し上げて2cmくらい、とされていますが、
バイクによってチェーンの遊び設定が違うため、マニュアルに記載してある通りにすべきですよ。
※バイクは買ったらマニュアルも買うのが基本です。マニュアルは絶版になるとなかなか手に入らず、非常に高価になりがちです。
チェーンは凄く強度が高いので、
リアサスがフルボトムした時にチェーン突っ張るとエンジン側にダメージが及ぶことも有るのです。
バイクのチェーンの遊びは、
「サスペンションのストローク量で決まる。」
のです。
リアサスを外した状態でホイールごと持ち上げるとチェーンが次第に張っていきます。
フルボトム状態でチェーンが突っ張りすぎない遊びがベストです。
※これも機会があれば自分のバイクでやってみるといいですよ。
したがって、
リアサスが長くストローク量の大きいため、
チェーンが引っ張られる量が多いオフ車は遊びが大きいのです。
なんでもそうですが人間と同じで張りすぎは良くないのですよ。
※テンショナーで張り切れないほどたるんだカムチェーンはダメですが。
配線の遊びは不要という人もいるけれど
操作に影響しない配線(ハーネス)の遊びは不要なんじゃ・・。
という人もいるでしょう。
配線系にも適度な遊びは必要なのです。
確かに。
遊びのない配線は綺麗に見えます。
それは直線部だけですよ。
カーブした配線などはしっかり遊びが設けてあります。
これも、
「基本的には配線にテンションをかけ続けないため。」
です。
配線にテンションがかかりすぎると配線の接続先のコネクタや機器にダメージが及ぶことも有ります。
張りすぎた配線は各部と擦れて被膜が破れて漏電することも有ります。
実際にコネクタが華奢な精密機器内部の配線には芸術的な遊びが施されてたりしますよ。
※コネクタの直前でくるっと一回転してたり。
バイクや車の配線の場合、
電球のソケット付近などでは配線にさらに余裕を持たせてあるはずです。
部品交換が考えられる箇所の配線に余裕がないと、
「交換しようとして配線引っ張ったら接触不良になった。」
等という二次災害になりかねませんので。
HONDAのバイクは総じて配線の遊びが少ない感じはするけど設計思想なのかもしれませんな。
※VT250FHの時代のHONDAのバイクの設計はトップブリッジにヒューズボックスが設置されてることが多く、尚更配線がギチギチです。
キーの周りの樹脂パーツを外すとひヒューズが配置されているのだ。
例え遊びが1cmだったとしても配線は何本もあるし、
生産規模が多くなればなるほどコストに跳ね返ってくるわけですよ。
工業製品というのは結構大変なのですねえ。
※量産効果で相殺できることも有るハズなのですが。
ちなみに・・
またバイクのハンドル周りの話になりますが、バイクの配線の多くは車体からハンドル周りを経由して、
メーターや灯火類、スイッチ類などに電力を供給していますね。
多くの車種はメインフレームの左側から、ステアリングステムをくぐらせて各機器に配線されています。
ハンドルが切れることでこの部分の配線へのテンションのかかり方が変わります。
ゆえに。
バイクの首根っこ部分は配線の遊びが最も必要な個所とも言えます。
USB電源やドラレコ、電気式タコメーターなどを追加する場合、
車体のフレームに収められたバッテリーから電力供給を受け、ハンドル周りに設置することが多いです。
ゆえに。
「首根っこ辺りの配線の遊びをどの程度取るか?」
は結構悩むポイントになるし、腕の見せ所にもなります。
機器を追加した場合の配線のまとめ方とかでセンスと経験が問われますな。
配線追加した車両の首根っこ周辺を見るとオーナーのメンテナンスレベルがよくわかったりします。
※バッテリーから直接取ってる配線のコネクタを固定せずにアホ毛のようにプラプラさせてるK君。それは危ないと何度言ったら分かるのだ。ヒューズも入ってねえし。
遊びの余分は目分量?
明確な規定もない様なので割と勘と経験と度胸なんですよねえ。
メーカーや企業には各種配線の設計仕様があって、決まった配線の長さで各種のハーネスが作られています。
※そのはずです。
オーナー自身が機器を追加したい場合、
「配線の遊び分長さはどう考えればいいのか?」
って話です。
基本的には、
設置位置までの最短距離+コネクタ回りの余裕分+ハンドルなどの稼働分
という感じでしょうか。
ワタクシは割と適当です。
自信がない人ほどこの余裕分を長くとる傾向がありますな(笑)
※逆に経験のない人はパツパツに張って配線しがちです。
とはいえ、
短いものを伸ばすことはできないので気持ち長目が正解な気がします。
首根っこの左側に配線を通すのが一般的。
短いよりは多少長いくらいの方がいいと思いますが、
ということも有るのでほどほどにしておくのがよろしいかと。
最悪、長けりゃタイラップで固定したっていいんだし♪
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ちなみに・・
最近の車はMT車が激減してることも有るし、油圧クラッチの車も多いのでワイヤー駆動のクラッチペダルを装備した車は少ないです。
もちろん、
車であってもワイヤー式のクラッチなら遊びの調整もできます。
スパっと切れるクラッチは気持ちがいいし、
何よりクラッチミートの位置を調整できるのがありがたい。
が。
車のクラッチケーブルもバイクと同じで消耗品なのですがバイクと違ってグリスアップしずらい。
ワタクシはラパンSSのクラッチワイヤーのテンション張りすぎて出先でクラッチワイヤーを切ったことがあります・・。
渋滞に巻き込まれてる時じゃなくてホントによかった。
※道路沿いの花屋さんの駐車場に退避してからレッカー呼びました♪
それ以降、
ケーブルの遊びはほどほどにしています。
クラッチワイヤーが切れる直前はワイヤーが毛羽立ったためか操作が重くなりました。
こういう傾向があったらワイヤーは早めに交換するのがおススメです。
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まとめ
遊びが全くないと突然プッツリ切れてしまうのも人生と同じです。
遊びだらけだとまともに進まないのも人生と同じっぽい。
メンテナンスや整備をするうえで意外と悩むのがこの遊びって奴です。
実践を繰り返すことで身に付く経験的なことが多く、明確に説明してくれる人もそういないんですよねえ。
電気系の配線は純正の長さを正義として合わせるのが無難ですが、
ワイヤーなどの操作系の遊びがありすぎると正しく動かなくなるので論外とはいえ、
遊びの量はそれぞれのライダーの好みや体格にも大きく左右される要素があるので、
いわゆる現物合せに近く正解はないんですよねえ。
人のバイクを借りるとこういう細かい調整が自分の好みとは違うので、
「自分のバイクじゃないんだな。」
と思うことがあります。
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ということは。
こういう細かいパーソナルな好みの調整というのは、
「自分だけのバイク。」
にするための最も簡単で安価なことなのかもしれませんな。
こういうのがチューニングというのです♪
ワイヤーのグリスアップのついでにワイヤー類の遊びの調整もしてみたらいいと思います。
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ちなみに・・
最近はワイヤレスのアクセルが増えていますが、
「車やバイクの操作はワイヤーこそが確実。」
とワタクシは思っています。
少なくとも自分が元気に乗り物で遊べるうちはワイヤー駆動が主流だろうし、
これから乗る乗り物も極力ワイヤー駆動が好ましいと思っています。
確かに。
アクセル開度をセンサーで感知して離れたところで燃料を供給するシステムになれば、
小スペースを期待できますし、ワイヤー駆動のロス分がないのでダイレクト感もあるでしょう。
ただし。
そんなのはレースの世界の話でして。
一般公道で普通の人が使う分には耐久性や確実性、部品の供給製の方が優先されるのです。
で。
センサーって壊れると高いのよ。
しかも、割と安価で安易に調達可能なワイヤーとは違います。
基本的に全部専用設計品です。
こういう高くて希少なパーツを在庫すると税金がかかるのでメーカーは持ちたがらないんですよ。
なのでメーカーの部品供給期間は短いハズ。
となると。
やっぱり長くは乗れないのではないかと勘繰ってしまうからです。
一旦手に入れたバイクや車は長期間にわたって乗り倒すのが最もお金がかからないのです。
基本的に長く乗れるバイクや車の構造はシンプルであんまり凝った設計ではないものですよ。
どうせ最新技術や流行りの技術はすぐに廃れます。
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