タンク上部がフラットになり、タンクバッグが置きやすい。
ただし、複雑な構造になるので不具合が起きやすいのです。
今回はレストア中のVT250FHのタンクキャップの清掃とメンテナンスをしてみました。
当記事の目次
VR250FHは過渡期の「エアプレーンタイプ。」のガソリンキャップ
「エアプレーンタイプ。」のタンクキャップは80年代中期以降のバイクの多く採用されました。
いわゆる「トレンド装備。」だったわけです。
80年代中盤のバイクのガソリンタンクのキャップは、ガソリンタンク自体に埋め込まれるように設置されます。
要するに「タンク上面をまっ平らにできる。」ということです。
この方式は元々空気抵抗を減らすための航空機の設計思想だったため「エアプレーンタイプ。」と呼ばれます。
これが
「なんとなくレーシングマシンっぽい。」
ということで、レプリカブームに乗っかり大流行りした装備だったのです。
※実際のレーシングマシンはクイックチャージャー仕様なのでエアプレーン式とかそういう話ではないのですが。
タンク上面がまっ平らになるため、タンクバッグの座りが大変良くツアラーにも歓迎されたのです。
最初に「エアプレーンタイプ。」を採用したのは初期型ヤッコダコテールのRG250γあたり('83年頃)。
他社もその流れに乗っかるわけですが、YAMAHAなんかはかなり後迄、採用を躊躇してたきらいがあります。
というのは、
「タンク上部に凹みができるので水がたまる。」
という問題が否めなかったためと思われます。
この問題解決にはものすごい労力が必要だったっぽいんですよ。
ゆえに、
この頃のバイクのタンクの形状は非常に凝った作りになっています。
VT250FHの水抜き経路
VT250FHでは
という非常に凝った作りになっています。
給油口のわきにあるのが水抜き穴。
ここからタンク内に水の経路が配管されてるのだ。
バカじゃねえの?ってくらい 変態HONDA炸裂の凝った設計です。
ほんとにVT250Fシリーズのエンジン回りの設計にはお金がかかっています。
※その分足回りとかチープですが。
「エアプレーンタイプ。」のタンクキャップの採用はただ流行物を採用しただけに見えますが、
実はタンクキャップやタンク自体を含めてものすごく凝った作りになっているものが多いです。
それまでのタンクキャップというのは、
「タンクの上に乗せるモノ。」
だったのです。
タンクに埋め込まれたり、一体となるわけではないので別個のパーツとして問題ありません。
適当なデザインでも大丈夫だったハズで、設計変更とかも楽だったと思われます。
オフ車は性格上、水やゴミが溜まりがちなのでエアプレーンタイプは採用されにくい。
従来のタンクにのっけ型のタンクキャップから「エアプレーンタイプ。」のタンクキャップにするだけでも大変だったハズなのに、
この頃のバイクはフレームがダブルクレードル方式からアルミのツインスパーフレームになる過渡期です。
ガソリンタンクはそれに合わせて、フレームをまたぐ形式から、両脇のフレームに乗せる形式へとデザイン的にも大きく変化するのでした。
この頃はバイク自体の各機能、フレームや足回り、カウル形状や素材、加工技術の進化が著しかったのです。
そんな中でタンクキャップですら進化していきます。
※景気が良く、勢いがあるってのはそういうことです。
当時のガソリンタンクのデザイナーとか設計者は試行錯誤をたくさんしたんだろうし 楽しそうですが 大変だったと思うんですよ。
「エアプレーンタイプ。」になってからもタンクキャップは進化しました。
へと変わっていきます。
※給油時にタンクキャップを外して落っことすユーザーが多かったんだろうと推察します。
押すとロックがかかる凝った方式
この作りや機構がまたえらく凝ってるのです。
タンクキャップを外す
タンクキャップにキーを挿して捻るとタンクキャップ自体をタンクから外せます。
タンクキャップの裏には左右にアームがあり、キーを捻るとアームを収納するように動きます。
するとタンクキャップ内の円筒状のガイド部がスプリングにより下がり、タンクキャップ自体がタンクから浮く設計です。
これでタンクキャップがフリーになるため、外すことができます。
※ここまで凝る必要あるのかね?
この画像はアーム部が収納されてる状態。
タンクキャップを付ける
タンクキャップの前方に凸部をタンクの前方の凹みに合わせてセットして、押し込むことでロックがかかります。
この仕組みも凝っているんですよ。
タンクキャップがタンクと直接あたる箇所にはゴムのパッキンがあります。
当倶楽部のVT250FHのタンクキャップは30年以上まともにメンテされてないハズですが、パッキンは結構丈夫なゴムでほとんど劣化してませんでした。
ゴムの品質は 現在の高級外車とは比べ物にならないレベルで 良質です。
このゴム部が押されると円筒形のガイド部が上がり、収納されてたアームが飛びだします。
アームはタンクの給油口に引っかかりロックがかかるという仕組です。
すげえ。
Z1-RとかZ750D1なんてゴムパッキンで押さえて爪で引っかけて固定してるだけだぜ。
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たかがタンクキャップでもこの時代のものは複雑な機構を持っているんですなぁ。
※景気がいい時代の設計とは、こういうことですな♪
ただし、
可動部が多く、機構が複雑なので動きが渋くなりがちです。
可動部は漏れなく錆などの影響もうけるし、劣化したガソリンなどの影響も受けます。
※白化した粉末状の固形物が詰まってたりしがちです。
動きが渋いタンクキャップを無理やり年代物のキーでこじ開けようとして、キーが折れるようなことになったら大惨事です。
※実際、この手のトラブルは数多いんですよ。旧車乗りは絶対にスペアキーを作っておきましょう。
ちなみに・・
2023/04末時点でVT250FHのタンクキャップはHONDAの純正パーツで一個だけ在庫がありました。
現在の価格は1万円越え(笑)
※当時のパーツリストでは3500円(笑)こんなに凝った作りなのに。
まもなく絶版パーツになると思われますが、ワタクシは 貧乏なので もちろん買えません。
パーツの値段については旧車のパーツ代は年々値上がりするので仕方ないのですが・・まだ買えるだけマシ、とも言えます。
純正パーツの見積もりや在庫状況が自宅からネットで出来るというのは本当にありがたいです。
VT250シリーズはエンジンパーツも欠品が増えています。
どうりで当時あれだけ売れたはずなのに今では街中でほとんど見かけないはずだわ。
でもたぶん、プレミアは付かないくらい不人気なのがまたいい。
※確かに絶妙にダサいデザインで一般受けしないのですが今となってはそれが新鮮。
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タンクキャップの稼働部を洗浄&グリスアップ
ガソリンに触れる以上、絶対流れちゃうんですが作動部の潤滑のため軽く注油をしておきました。
タンクキャップの可動部全てと隙間全て、穴全てにスプレー式のパーツクリーナーを吹きかけます。
当ブログでは何度も書いていますがバイクや車のレストアをする場合、パーツクリーナーをケチってはいけませんよ。
湯水のように使うことでいろんな作業時間を短縮できますし、穴の導通の確認が出来てトラブル防止にもつながりますので重宝しています。
※高価な泡タイプはめったに使いませんが。
いろいろ検討した結果、ネットでまとめ買いが一番単価が安いです。
で。
パーツクリーナーを吹きかけては慎重にキーを捻る。
これを繰り返して内部の汚れが適当に浮いてきたところで、エアコンプレッサー様を起動して最大圧で内部の汚れを吹き飛ばします。
これを、数回繰り返します。
この際、ゴムパッキンの裏側に溜まったのシツコイ汚れも拭取っておきましょう。
とりづらかったですが苦労のかいあって綺麗になりました。
この画像はアームが伸びている状態。
最後に可動部にCRC556を吹いておきます。
ゴムパッキンにはシリコンスプレーを吹いておきましょう。
どうせガソリンで油脂分は流れちゃうんですが気持ちの問題です。
これで動きが軽くスムーズになりました。
タンクキャップをタンクに装着するとパチンという軽い音がしてロックされ、キーが自動的に抜ける位置になります。
うむ。
大変満足だ♪
各穴にエアブローした際、
タンク内の気圧を大気圧と同じにするための空気穴の存在も確認しておきました。
気になってたんですよ、どういう構造なのか。
空気抜きの穴はキーカバーの裏
この際、はっきり確認しておきたかったのですよ。
VT250FHの「エアプレーンタイプ。」のタンクキャップの空気抜きの穴は、
「可倒式のキーホールのカバーの裏側。」
にありました。
※タンクキャップの裏側の空気の通路と思われる穴にパーツクリーナーを吹き付けた際にわかりました。
このヒンジの奥に空気抜きの通路がある。
こういう確かめ方をしない限り、気が付かないようにデザインされていますなぁ。
※凝った作りも極まれりですな。
上部の開放部は大きいのでめったなことでは詰まりそうもないですが、ここからタンク内に水が浸入すると思いますよ。
一応、タンク側はワンウェイバルブっぽくなっていますが。
初期の「エアプレーンタイプ。」のタンクキャップはまだ設計の詰めが甘いのかもしれません。
だからタンク内が錆びやすいのかもしれません。
この頃のバイクの現存率が比較的低いのはタンクが錆びやすいうえ、
タンクの形状が複雑すぎて錆の除去が上手く出来ないため廃車になった個体も多いのでは?と推察しています。
現在は良いタンクの錆落としやコーティング剤があるので錆びても復活できる可能性があるのですが。
※ダメな場合は何やってもダメです。ウィザードリーで死んだキャラの死体を持ち帰って寺院で復活させようとしたら灰になったみたいなものなのであきらめましょう。
水が入りそうですが、それでも導通の確保と清掃はしておきます。
「空気抜きの穴が詰まってるとガソリンタンク内が真空になりガソリンが落ちないのでガス欠症状が出る。」
という古めのバイクではよくある現象を引き起こします。
※ガソリンがタンク内に十分残っててもガス欠症状を起こして、しばらくすると復活するならまず間違いなくここです。
旧車乗りでこれをやると結構恥ずかしいですのでたまにはガソリンキャップのメンテナンスもしてあげましょう♪
※屋外保管の車両や放置された期間のある車両はタンクキャップの空気穴が詰まり気味になってることが思いのほか多いのです。
まとめ
空気抜きの穴の存在も納得しましたし、複雑なロック機構も理解できました。
今回は動きが渋かったタンクキャップを清掃してみました。
軽くスムーズに動くようになったことで、キー折れや空気穴の詰まりと言ったトラブルとは無縁になったわけです。
※非分解式なので、全バラにして完璧に清掃できたわけではないのですがね。
ついでに、
タンクキャップの凝った作りを堪能出来て大変満足です。
※新しいパーツを手配したわけでもなく金銭的負担もほぼないため、すごく得した気分です♪
それにしても、
タンクキャップのキーが軽く回せるのは気分が良いですな。
タンクキャップを押し込んでパチン!とロックがかかるのも気分が良い。
何度もタンクキャップを付けたり外したりして、そのたびにニンマリしてしまいます♪
レストアは部分部分でこういう細かい楽しみがあるのでモチベーションが続くのです♪
新しいバイクでは当たり前のことですが、
今までまともに動かなかったボロバイクの一部の機能を復活させられたことが嬉しいのです。
とりあえずモチベーションを上げるために、レストア途中ですが外装一式つけてみた。
幸せになりたい人は、
「自分基準の小さな嬉しいことをありがたがる。」
のがポイントだとつくづく思いますよ。
逆に、
「小さなありがたみ。」が他人の基準になるといろんなものに追われる人生になります。
世間には他人の評価だけを気にして生きて 賢そうに見える 人が多いですが、なんか自分が無くて可哀相な気もします。
街中華の天津丼が思いのほか美味しかった♪
みたいなのもいちいちかみしめることです。
小さなありがたみをリアルに実感したければバイクのレストアは最適です♪
レストア作業はお金も時間もスキルも情報収集力も問われます。
大変ですが、その先には自分だけがわかる「小さなありがたみ。」がたくさん待っているのです。
ただし、
レストア作業の楽しさを他人に理解を求めようとすると「へえ。」という薄い反応になりがちなです。
その際はこちらの情熱だけで押し切る。
まず当人が面白がればいいのです♪