フロートバルブシートが純正パーツで用意されていないため、交換ができないからです。
このせいで何台ものバイクが廃車になったと思われます。
が。
今ではリペアキットが存在するのです。
良い時代ですな。
当記事の目次
KAWASAKIの負圧式CVKキャブは多数車種に使われてる
KAWASAKIの4st車は80年代から負圧式のCVKキャブを採用していました。
ワタクシ個人としては、公道で使う限りキャブの完成最終形態は負圧式キャブだと思っています。
少し前まではアナログ制御のキャブレーターを気化器とするバイクしかありませんでした。
キャブレーターは時代とともに進化してきたのですが、
特にレーサーレプリカ時代の進化速度はすさまじかったのです。
※この辺の話をし始めると一晩では足りなくなるので止めておくことにします。
現在はキャブレーターを搭載したバイクや車はほぼ作られていません。
ほとんどすべてのバイクや車はデジタル制御で気化を行うインジェクションに変わりました。
※一部のレーシングマシンにキャブ車があるにはある。
キャブレーター最終期の公道用バイクの多くは負圧式キャブと呼ばれるモノを搭載していました。
負圧式キャブはメーカーを問わず、幅広いカテゴリのバイクに搭載されていたのです。
負圧式キャブとは
負圧式キャブはCVキャブとも呼ばれます。
CVというのはConstant Velocity(一定速度の意)の頭文字をとったものです。
※要するにキャブのベンチュリ口径の開け閉めを直接アクセルワイヤーで行わない。
日本のケイヒン製のCVキャブレターは古い英国車に使われることが多いSUキャブレターの弱点を改善したものと言われています。
※SUキャブも深いよ。ワタクシはSUキャブが大好きだ。
負圧式キャブは負圧によってベンチュリーが開閉するため「考えるキャブ。」とか「反応が一瞬遅い。」とか言われることがあって、
マニアには煙たがられることも有るのですが、
「公道レベルでそんなのがわかる素人はいない。」
とワタクシは断言しましょう。
※雑誌の情報とかを鵜呑みにしすぎ。
当倶楽部のZ1-RやZ750D1は マニアには眉をしかめられることも多いのですが 負圧式キャブに変更してあります♪
当倶楽部のZ系バイクはもうずーっとCVKキャブを採用しています。
エアクリーナーボックスも付くし、公道では物凄く使い勝手がいいからです。
この仕様で20年以上乗っています♪
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とにかく。
負圧式キャブは、
といういいとこずくめのキャブなのです。
※じゃなきゃいろんなメーカーが純正採用するわけなかろう。
まあ負圧式キャブと言っても
などなど形状はいろいろあるのですが。
さらに。
その時代時代で、
「環境性能向上対策。」
が施されているので同じ車種でも年式でキャブの仕様が異なるなんてのは割と普通です。
※セロー225系のキャブは設計者の意地とも思える進化をしてるので調べてみると面白いよ。
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このように負圧式キャブと言っても多種多様なバリエーションが存在しているのです。
ともあれ。
負圧式キャブは公道用では最終期のキャブの主流でした。
ということは負圧式キャブは究極の進化の形態だとも言えます。
が。
キャブの時代が終わって早20年近くが経過しました。
無理もないのですが負圧式キャブは純正パーツが無くなりつつあるのです。
今後は
「キャブ搭載バイクは減ることはあっても増えることはない。」
のです。
なので。
現存するバイクはみんなで大事にしようじゃないかということなのですよ。
※キャブ仕様の調子が悪い中古バイクを買うと後々大変ですがね。
普通にツーリングにも出かけますし。
キャブは自分で調子を整えられるので面白いんですよ。
デジタル制御のインジェクションとはだいぶ違うのです。
ハマると抜けられなくなります。
↑ワタクシは10年くらい前からココ。
ちなみに・・
負圧式キャブの対極にある強制開閉式キャブというものがあります。
こちらはアクセルワイヤーでベンチュリを開閉するのでダイレクト感が売り、ということになっています。
見た目はカッコいいのですがセッティングは結構シビアだったりします。
※燃える分だけ燃えるタイミングで開けてやる、ということが理解するのが大事。
Z1系の純正キャブは強制開閉式でした。
この頃は高性能キャブと言えばこれだったのかもしれません。
年代が新しくなるにつれ、
次第にシリンダーからの負圧が高い4stエンジンはどんどん負圧系キャブに変わっていくのです。
Z1系の後継であるZ1000J系は負圧式キャブです。
※2st勢は強制開閉式が最後まで使われていましたが。
Z1系の強制開閉式キャブは海外で使われたものが多く、消耗が激しいものが多いのです。
※キャブはどんなものでも消耗品です。
「調子の悪い強制開閉式キャブよりも調子のいい負圧式キャブのほうがいい。」
ということでワタクシは20年以上前にZ1-RやZ750D1のキャブを純正の強制開閉式キャブから、
ゼファー用(ゼファーX用もあり)の負圧式キャブに変更しているのでした。
※調子がいい時は燃費も20km/l行きますし全く不満はありません。
CVKキャブはオーバーフローが癖になると廃車?
これは放置されたり、長く運用したりしていると不具合が出るんですよ。
それも致命的な。
一見無敵そうに見える負圧系のキャブですがさすがに製造終了から20年以上経つと不具合が出始めます。
当倶楽部のキャブはまだいい方で放置車両に搭載されてたキャブはまず間違いなくまともに動きません。
※負圧式キャブは超精密機械なのでちょっとした空気の流れが滞る箇所とかあるとたちまち不調になるからです。
普通に乗り続けていればそれほど痛むものでもないんですが、
数年単位で放置された車両に搭載されてたキャブはまず間違いなく不調になっています。
※不調の原因はオーバーフローに限りません。
当倶楽部では部品取りとして数個のCVKキャブを調達しているのですが、
中古で手に入れたゼファー用とかゼファーX用(ZRX用かも知れない)のキャブは一つとしてまともに動きませんでした。
その多くは、
ガソリンの流入経路を制御するフロートバルブ周りがダメになっていてオーバーフローします。
しかも。
CVKキャブはオーバーフローしたガソリンをキャブから車外に排出する機能がなく、
溢れたガソリンはエアクリーナーボックスとかシリンダー内にガソリンが流れ込むという殺人的な仕様になっているのです。
※シリンダーにガソリンが流れ込んだら下手すりゃウォーターハンマー現象で廃車とか爆発炎上とかそういうことになりかねません。
そして。
オーバーフローの制御をするフロートバルブシートというパーツは圧入されていて、
KAWASAKIからはパーツ単位で入手が出来ないようになっています。
一度オーバーフロー癖が付くと直せないってことです。
※オーバーフロー癖のあるバイクでで遠出なんてしたくないです。
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ということは。
という 非常にもったいない ことが多いのです。
※純正のキャブは部品としてとるとめちゃめちゃ高いし。
というか、
今まではそのケースが普通でした。
なのでヤフオクとかで流通している中古のCVKキャブは大抵この手のトラブルを抱えていることが多いのです。
※中古バイクでもその傾向はあります。
まあ4連キャブの場合、
理論的には複数のキャブの結合を剥がしてまともなキャブだけで4連を組みかえれば使えないこともないのですが、
すんごい面倒くさい上にお金がかかりまくるので ワタクシのように意地にならない限り 誰もやりませんな(笑)
まだ新品のゼファー用の4連キャブが売ってた時に買っておけばよかった。
確か15万円くらいだったハズですが今となっては安い気がします。
というわけで。
今でもCVKキャブが不調になるとバイク自体を廃車にするオーナーは多いのです。
ちなみに・・
オーバーフローの原因はいろいろありますが基本的にはフロートバルブ周りの問題です。
フロートバルブシートに傷があったり、フロートバルブの動作が上手く出来ないとかだとガソリンは駄々洩れします。
フロートバルブ自体が変形していることも有りますがストッパー部がゴムなので多少の変形は許容範囲のようです。
多少変形しててもオーバーフローしないキャブもたくさん見ています。
※中華の国の粗悪品のフロートバルブはすんごく安いですがまともに見えてもオーバーフロー気味なものがあります。
基本的にはフロートバルブとフロートバルブシートはセットで交換するのが普通なのですが、
KAWASAKIのパーツリストにはCVKキャブ用のフロートバルブシートの供給設定がないのです。
※Z1系の強制開閉式キャブではフロートバルブシートのパーツもあるんですがね。
キースターさんから出てる各種キャブのリペアキット
出先でZ1-Rの1番キャブからガソリンが駄々洩れしたことがあります。
近くの民家に止めてもらって軽トラれ引き取りに行ったという失態があったのです。
予備のパーツの調子を見ようと よせばいいのにわざわざ Z1-Rに搭載してちょっとだけ遠乗りしたのですが、
次第にエンジンが吹けなくなり、当倶楽部から50kmほど離れた場所で完全に失火してしまいました。
原因は1番キャブのオーバーフローでした・・。
この時の詳細な話はまた別の機会に。
赤丸のところが圧入されてるフロートバルブシート。
この内側が摩耗したり傷ついたりするとオーバーフローする。
今はZ1-Rは調子のいいCVKキャブで運用しているので特に問題はありません。
が。
今となっては新品は無いですし、まともな中古品のCVKキャブの入手はかなり難しくなっています。
予備のCVKキャブとはいえ完全稼働にしておきたいのです。
そんなわけで。
数年にわたって暇さえあればCVKキャブのリペア方法を調査したり情報収集したりしていたのですが、
中々有用な情報がありませんでした。
が。
少し前にキースターさんから負圧系キャブのフロートバルブシートリペアキットが出るという情報を得たのです。
最初はCB-F系の負圧式キャブ用のリペアキットでしたが、
「絶対にCVKキャブ用のリペアキットが出るハズだ。」
という確信に近いものがワタクシにはあったので待ってました♪
で。
やっぱり出たのよ、CVKキャブのオーバーフロー問題を解決するリペアキットが。
やっぱキャブのパーツと言えばキースターさんだよねえ。
というわけで。
早速手配したのですが、作業する暇が全然なく約1年以上手つかずだったのです。
安い類似品はダメなことが多いです。
キースターのものが確実で安心ですよ。
ようやく冬の雪が降る休日に内勤(当倶楽部では雨や雪で出かけられない日の作業をこう呼ぶ)で作業をすることにしました。
※冬は大きな整備をする予定を入れてるのですが、寒すぎて工具が冷たいので動きが鈍いのでした。
ちなみに・・
バイクのレストアするならまず押さえておきたいのがキースターさんの純正キャブのセッティングキットです。
当倶楽部ではキースターさんのキャブレーターセッティングキットを多用しています。
※ダイアフラムとフロート室のパッキンもキットに付属してくれるともっといい。
こちらはジェット類とかニードルバルブ(!)がセットになってる。
※ニードルバルブも部品単体で注文できないので超ありがたいパーツです。
いざという時、
スロージェットやメインジェットなどのセッティングパーツを単体で集めるのは結構面倒くさいし大変なのです。
複数のジェットニードルをセットしてくれるのもありがたい。
こちらにはちゃんと説明書が付いてる。
全てのキャブレーター搭載バイクのオーナーはキースターさんに足を向けて寝てはいけません。
それくらいありがたい会社ですよ。
※ワタクシを中途採用で雇ってくれないかしら?
手順やマニュアルはYouTube
キットにはマニュアルや手順書はなく「YouTube動画を参照せよ。」ということになっていました。
届いたフロートバルブシートリペアキットには説明書がついてない・・。
付属の紙を見ると動画サイトを見よ、という記載がある。
ほう。
そう来たか。
まあこれも時代の流れなので仕方ない。
というわけで直接動画に飛べるQRコードを探したのですが・・ない。
KeyStarチャンネルから探せということか。
※↑このURLすらもない。
アナログバイク屋さんのオヤジは見れないんじゃ・・(笑)
※ワタクシはバイク整備情報を動画で見せるのは反対。オイルまみれの手でスマホとかPCとか触りたくない。
ともあれ。
なんとかネット上で解説動画を見つけ出したのでそれに従いましょう。
※HONDAのCB-F系の負圧式キャブでの解説動画でした。KAWASAKI系のCVKの動画はなさそうです。
動画は分解編と組付編の二部構成になっていました。
動画は分解編で3分強、組付編で8分強です。
※一回見れば理解できるレベル。
フロートバルブを外す迄やってみた
分解するところまでやってみました。
付属の高精度の治具が大活躍なのだよ。
という流れです。
引き抜いちゃった画像しかないや。
まあ言われてみりゃ当たり前の作業なのですがさすがに専用キットだけあって、
誰でも出来るようになっていますな。
※ガイド治具が素晴らしい。専用工具だけにこの作業以外に使い道がないけど。
動画ではメガネレンチでネジ切用のタップを回していましたが、
当倶楽部には適合サイズのメガネレンチがなかったため、
手持ちの工具タップ&ダイスセットのハンドルを使ってタップを回しました。
※この手のセットがないと作業できない気もする。
フロートバルブシートは真鍮製なのでネジ切に力はほぼ要りません。
動画通りにやれば意外と簡単に圧入されたフロートバルブシートが取れます。
サクサクと10分程度の作業で4つのキャブのフロートバルブの取り外しが完了しました。
外したフロートバルブシートの裏側には粉状の何かが付着していました。
酸化してるのかガソリンの変質物なのかわかりませんがしばらく使ってないキャブはこういう粉が付きがちです。
こういう異物は全てキャブの調子を狂わせるのです。
※大事なのでもう一回書くけれど「キャブは超精密機械。」ですよ。
新品のフロートバルブは綺麗なことったらないですな。
真鍮ってのは すぐ汚くなるけど 綺麗だよねえ。
このパーツが単体では手に入らんのよねえ。
キットに含まれてる。
真鍮製品の新品は美しいのだよ。
そうそう。
新しいフロートバルブシートを組付ける前にやることがあります。
ネジ切の際に細かい金属片が出るのでコレを完璧に取り除かねばなりません。
軽くたたいて切粉を排出しましたがこういうゴミがキャブ内に残るとまたオーバーフローしかねません。
コレをパーツクリーナー等で徹底洗浄することが次のミッションになります。
が。
当倶楽部の内勤では、
「一切のケミカルは屋内で使用は禁止。」
という鉄の掟があります。
部屋中がケミカル臭になるので不快なのと、
冬は薪ストーブをガンガン焚いているので可燃性のケミカルスプレーを使うのは危ないからです。
※当倶楽部ではいろいろな掟を破ると光より速く殴られます。
というわけで。
組付けは日を改めることにします。
まとめ
昔はこのパーツのせいでキャブを丸ごと廃棄したもんですが。
※もったいない。
キースターさんのCVKキャブリペアキットが後10年早く世に出ていれば、
たくさんのCVKキャブを使ったバイクと中古のCVKキャブ単体を救えたはずなんですがねえ。
それでもこのようなリペアキットを世に出してくれるキースターさんは非常にありがたい存在です。
現在もキャブのバイクを運用している人はキースターさんのリペアキットとセッティングパーツセットは手に入れておいた方がいいと思うよ。
それくらいありがたいキットなのです。
多少高いですが手に入るうちが花です。
この手のパーツはあっという間に販売終了になるリスクがあるのです。
※儲からないからね。
無くなってから泣くよりも前もって備えておけよって話です。
※なんでもそうですが。
実はキャブ周りというのは古いバイクのレストアの際に行き詰ることが多いのです。
※その他にもいろいろあるんですが。
キャブが本調子でなくてもとりあえず走ることができたりします。
※負圧式キャブの場合は特に。
関係ないがこの日の夜に友人が大量に取れたイワシを差し入れしてくれたのだ♪
※お刺身で美味しくいただきました。
走れてもキャブが本調子でないと本来の性能が全然でないことは実際に結構有るのです。
※中古のバイクは多かれ少なかれそんな状態なハズ。キャブのバイクが世に放たれなくなって20年ですからね。
キャブのパーツはたかが数ミリのものが多いです。
この数ミリのパーツを新品に交換するだけで本来の性能を取り戻すことができるかもしれません。
正直こんなもんが一個数百円とかキットで数千円とかすると思うと腑に落ちない気もしますが、
ああでもないこうでもないという素人考察を延々と続けるより不調の原因を特定するためには必要な経費かもしれません。
※少なくともこのパーツが不調の原因ではない、という原因追及の切り分けになる。
キャブ車が売られないようになって20年あまり。
メーカー純正品のキャブパーツはどんどんなくなっていますが、
キースターさんは今でも多種多様なバイクのキャブパーツを取り扱っています。
マジでありがたい。
旧車ブームと言われますがこういうポイントを押さえているパーツメーカーはほとんどありません。
数が売れるわけでもないと思うので利益は出ないでしょう。
多少高くてもありがたく使わせていただきましょう。
中古の怪しいキャブを買うより、
手持ちのキャブをフルリペアする方が確実ですし、安くつくことも多いハズです。
ちなみに・・
ネット上には精度が怪しいキャブやキャブパーツがたくさん売られてるんですよねえ。
ワタクシも安いCVKキャブのリペアキットを何度か買ったことがあるのですがそのたびに騙されています。
アイドリングすらしない番手の打刻がないスロージェットとか
一回り小さくてフロート室にセットできないパッキンとか
ひん曲がってて油面が出ないフロートとか
復活させようがないくらい痛んでいますが部品取りとしてはまだ使える。
これらは自分への罰としていまだに持っています(´;ω;`)
※使えないのでいい加減捨てようと思っていますが。
やっぱり信頼できるところのパーツは良いですなぁ。
※組みつけられないかも・・エンジンかからないかも・・みたいな不安が全くないので心理的に安心♪
キャブとかの細かくて精度が求められるパーツはやっぱし日本製がいいよな、と強く思うんですよ。
※英国製も結構酷いけど中華の国製はその数倍は酷いです。