次はブレーキ周りのレストア作業行きます。
実は引き取ってきたVT250FHはブレーキシステムに不具合があり、ブレーキがかかったままになるので押し引きも大変な状態なのでした。
なので、普通に車体の取回しができるようにしようというわけです。
当記事の目次
レストア前には現状確認をしよう
何はなくとも現状を確認、それもブレーキ、キャブ、サスなどのセクションごとに。
フロントブレーキ周りは酷い状態でしたので作業にかかる迄相当覚悟が必要でした。
どこもかしこもひどい状態だったVT250FH。
とりあえず ミテクレはどうあれ エンジンはかかるようになりました。
次はブレーキシステムを見直します。
その前に、現状確認をしておきます。
フロントブレーキ
当倶楽部のVT250FHは、マスターシリンダーはとりあえず機能するけれど、キャリパー内で不具合あり出たピストンが一切戻らないのです。
※要するにブレーキかけたらかかりっぱなし、ということです。
実は最初に車体を当倶楽部まで運搬してくる際もブレーキがかかりっぱなしになりまして。
軽トラに乗せることすらできなかったのですよ。
仕方なくキャリパーごと外してブレーキパッドをマイナスドライバーを使いテコの原理で押し込んで無理やり動かしました。
左右とも無数に金づちでぶったたいたような跡がある。
キャリパーは 前のオーナーか誰か知らんが素人が バンバン金づち的なもので殴った後があり、まともに動かない可能性もありました。
※こけた訳でもないのに、こんなにひどい外観のキャリパーも珍しい。
ホースは外見上無事っぽいですが、念のためメッシュホースにした方が良さそうです。
マスターシリンダは元々銀色でしたっけ?
ブレーキフルードに侵食されたのか一部塗装が浮いています。
ミテクレはそのうち綺麗にするとして、とりあえず、軽くワイヤブラシで塗装を剥がしておきましょう。
※本来は、分解時に再塗装する方が楽ですが スペシャルセッカチなので とりあえず動かしたいのです。
リアブレーキ
リアブレーキペダルの動きがものすごく渋いです。
構造が単純なドラムブレーキなのでそれほど心配はしていませんが可動部は分解清掃&グリスアップは必要でしょう。
まあ、それくらいは中古バイクを手に入れたらやるべきなので心配はしていませんが。
ドラムブレーキは酷いのになると、ドラムの中でブレーキシューが張り付いて剥がれない、なんてものもあるんですよ。
※車でサイドブレーキ引きっぱなしで放置された車両にありがち。
こんな状態なのでフロントブレーキは、
リアブレーキは、
というメニューで行きます。
わかってる限りのパーツを集めよう
とりあえず、パーツリストは手に入れてあるので、必要なパーツを発注しました。
HONDAのVT250FHのブレーキパーツは意外と出ますね。
は202302時点ではメーカー純正で全部でました。
※予算の都合でピストンは買いませんでしたが、本来は買うべき。
こんな記事もあります▼
また、
「マスターシリンダーのフルード点検窓。」を楽天で手配。
綺麗になると気分がいいパーツの一つです。
※白濁したままだとバイクが古臭く見えるのでダサい。
メッシュホースの85cm×2も楽天で手配。
こんなに安くてインカ帝国?みたいな値段で売ってました。
は当倶楽部在庫を使用します。
※何でもストックしておくもんですな。
ネットで発注したパーツが続々と届いていたのですが、なかなかまとまった作業を出来る時間が取れないまま、半月あまりが経過。
ようやく半日時間を作ることができたので作業に取り掛かることにします。
ブレーキ周りのオーバーホールは一気に進めよう
余計なゴミや湿気などの影響を受けたくないので。
ブレーキフルードは吸湿性があるので作業中断中に雨とか降られると嫌なのですよ。
まずは、フロントブレーキ配管内に残ってる既存のブレーキフルードを排出します。
ブレーキ配管内にある恐らく10年以上放置されているフルードを全部抜きます。
抜いたフルードはペットボトルにいったん保管します。
※当倶楽部敷地内に使う超強力除草剤として再利用するのですよ。
次にキャリパーがフロントフォークについている状態でホースを接続しているボルトを外します。
マスターシリンダもハンドルについてる状態でホースを接続しているボルトを外します。
※この時点でも結構フルードは漏れるけど慌てない。
キャリパーをフロントフォークから外して、
マスターシリンダをハンドルから外して、
ステンレストレーに並べていきます。
ここまでは順調でした。
ところが。
そんなに甘くないのです。
キャリパーからピストンが抜けない
固着していてどうやっても取れません。
いわゆる無理ゲーです。
どうしたもんか。
今までの経験上、キャリパーにピストンが固着している場合は、
キャリパーを単体にして、ホースの穴から6kPaくらい加圧してエアブローすれば抜けたのです。
このエアで加圧してピストンを抜く作戦をとる場合、
ウェスなどでピストンが吹っ飛ばないようにして、指などを挟まないように気を付けましょう。
そうでないとすごい音して、ピストンがミサイルのように勢いよく吹っ飛んでいきますので注意が必要です。
※窓ガラスとか余裕で割れます。
が。
今回のVT250FHのキャリパーピストンは固着しまくってて、いくらエアブローしても全然抜けません。
仕方なく「ブレーキピストンプライヤー。」という専用工具をわざわざ出してきましたが、全く歯が立たず。
※今回のために段取りして用意してあったけど使えなくて残念。
せっかく買ったのに使えなかったのでまた無駄使いになってしまった。
握りがしっかりして、ガッツリピストンの内側に噛みこむヘッドのものがおススメ。
某一流輸入工具店「スト〇ート。」さんの安いやつは握りが細くて痛くなるので駄目だわ。
数時間エアブローやウォーターポンププライヤーを駆使した格闘の末、
方押し2ポッドキャリパー×2個分の4つのピストンのうち、3個は抜けました。
※想定外の時間ロス。しかも一個ピストン傷つけちゃった。
でもどうやっても残りの一個のピストンが抜けません。
※ちょっと動かしたら固着が剥がれるかと思い、逆に押し込んでみたら完全に手詰まりでマジ焦りです。
画像をとるくらいの余裕はないので撮影していません。
段取りミス
最初からここまで固着してるのがわかってれば、
ブレーキフルードが残ってる段階でブレーキレバーをにぎにぎしてピストンを押し出すのが良策です。
とはいえ、
もうバラシちゃいましたし。
というわけで、
外れないピストンを含む片側のキャリパーをマスターシリンダとブレーキホースで直つなぎして油圧でピストンを押し出す作戦に出ます。
ほんっとに面倒くさいので出来ればやりたくなかったです。
でも取れる手段がこれしかなく、時間がどんどん過ぎていくので仕方ないのです。
ただ、
その作戦に使うマスターシリンダーのオーバーホール作業を先にやってしまいたい。
何とか抜けた3つ分のキャリパーピストンのシール類を交換してしまいたい。
方針転換というか「負けの作戦。」なので何でもいいので戦果が欲しいのですよ。
外したパーツ類をステンレストレーに並べて、
パーツクリーナーとワイヤブラシ、マイクロドライバーなどでで片っ端から清掃していきます。
※当たり前ですが、再利用するラバーブーツなどのゴムパーツを傷つけないよう慎重に作業しなければなりません。
それにしても、キャリパーもキャリパーステーも汚い。
まあ、時が来たら塗り直してやろうじゃないか。
今はミテクレよりもちゃんと動くことを優先します。
※綺麗さにこだわる完ぺき主義のレストアラーの作業が、いつまでたっても完成しないケースは数多いのです。
傷つけちゃったピストンは軽くコンパウンドで磨き引っかかる様な傷はサンドペーパーで軽く面取りしておきました。
ちなみに・・
厳密にいえば「ブレーキピストンには傷とか一切あってはならん。」ということになっています。
確かにその方がいいに決まっています。
ですが。
極端な話、ピストンシール部と接触する可能性がある面が綺麗なら問題はないとワタクシは思っています。
※あくまでも自己責任です。
ピストンシールとピストンが接触する箇所というのは割と奥まったところです。
※減ったブレーキパッドならかなり奥になります。
ダストシールはあくまでも、ダストシールなわけで。
防水、防塵が主な役目です。
ゆえに、極端な話、ダストシールが破けててもピストンシールが生きていればブレーキは機能します。
※まあ、水が入って錆びてピストン固着、なんてことは考えられますが小まめにメンテすればいいだけです。
そうそう。
レース用のブレーキキャリパーを組んで公道走っている人は知ってるかどうか知りませんが、
「レース用のブレーキキャリパーってダストシールない。」
ですよ♪
※雨天走行なんかしたらピストンシール手前まで水が浸食してきますよ。
というわけで、
「ピストンが綺麗だろうとダストシールが破けてなかろうと、キャリパー内でピストンが固着する時は固着する。」
のです。
ブレーキキャリパーもたまにはちゃんと清掃&整備しろってことなのですよ。
キャリパー内の各種シールを抜く
でないと、抜けないピストンを抜くためにピストンをまた戻したら出てこなくなった、なんてことになりかねません。
公道用バイクのキャリパーには1ピストンごとに、
の二種類のシールが内包されています。
これらのシール類はキャリパーの内側の溝にハマってるだけなのでシールを撤去するのは楽勝です。
小さなマイナスドライバーでサクサクと撤去できます。
厳密にいうと専用ツールがあるにはある。
シールをとるのは楽勝なのですが、
シールがはまっている溝には古いブレーキフルードが劣化して固形物になったモノが付着しているのですよ。
そんなものがあったら、シールの密着性が落ちるのは明白ですので、
マイクロマイナスドライバーやパーツクリーナーなどを使って、チマチマと除去していきます。
※まあ適当なところで止めるべきなのですが、結構いつまでも取れるんですよねえ。
シールぬいた直後ですな。
新品は気持ちがいいですな。
※価格を考えるとちょっとぞんざいに扱えないですが。
最後に、キャリパー内をパーツクリーナーで洗い流して新品のピストンシールとダストシールを組みます。
この際、ピストンシールにグリスを塗らない方が良いのかもしれませんがワタクシは薄く塗っちゃいました。
↓この記事に、キャリパーのシールにはどこまでグリスを塗布すべきか?という内容があるんで読んでおくように。
こんな記事もあります▼
シール類を組んだら、薄くブレーキグリスを塗布したピストンをキャリパーに真っすぐに挿入します。
※大抵、真っすぐじゃないと入りません。力技では絶対に入りません。
キャリパーのホース接続穴に、圧と出力を落としたコンプレッサーで軽くエアブローして、ピストンがスムーズに出て来るのを確認します。
※複数ピストンのキャリパーは、パスカルの法則の理論上では、完全に同時に押し出されるはずなのですがなかなかシンクロしませんな。
ゆえに、片側を押さえてコンプレッサーの圧を押さえたうえでエアブローして動作確認するのが確実です。
続いてマスターシリンダーの作業に
ミラーやブレーキスイッチなども外します。
単体になったマスターシリンダーはワイヤブラシやパーツクリーナーを使ってワシワシと洗浄していきます。
※レバーもせっかくなので分解清掃しておきました。
ここまで崩壊していると見事です。
やっぱりメタメタに傷んでいるマスターシリンダのダストブーツ。
こうなると防水防塵なんて機能はほぼありませんな。
雨天で走れば間違いなく内部のグリスが流れ出し錆びるでしょうねえ。
サークリッププライヤーを使ってマスターシリンダー内のピストンを止めているCクリップを外します。
※このCクリップは特殊工具「サークリッププライヤー。」がないとまず外せません。
メンテナンスをするうえでは専用ツールがないとほぼ外せないものもあるのですよ。
外してみたマスターシリンダ内のピストンやシール類は、
そんなにボロくないようにも見えますが、どうせ10年以上放置されてた個体なので思い切って全交換します。
マスターシリンダー内のピストンはブレーキ用のグリスを塗布してから組み込んでシッカリCクリップで固定します。
以外にも内部の錆びはCクリップ付近で止まっていました。
※ずっと、ブレーキ握られてなかった可能性が高いです。
続いて、
劣化して白化した樹脂のフルード点検窓も内側から押し出して、無理やり外します。
こんな記事もあります▼
はめ込むときはちょっとコツが要りますが、真っすぐ均等に複数回に分けて押し込んでいくだけです。
※ここでもウォーターポンププライヤーが活躍しますが、ウェスなどを咬ませないと窓にもマスターシリンダーにもすぐ傷つきますよ。
この部品をとるにもつけるにもちょっとコツがいる。
ちなみに・・
車の話ですが古い外車のマスターシリンダにはCクリップがないものがあります。
まあ常に押されているわけなので、シリンダーに挿入されるピストンの外れ止めは要らないっちゃ要らないのかもしれませんが。
それはあまりに酷い。
※旧車とはいえ、国産車ではありえない。
実際に旧miniの油圧クラッチについてるマスターシリンダにはCクリップ自体がありませんでした。
※旧FIAT500のブレーキマスターシリンダにはちゃんとCクリップが付いています。
旧miniのクラッチマスターシリンダは、一応精度の悪いすき間だらけのゴムのダストブーツをかぶせるようになっています。
ただし、
グリスアップなどのメンテナンス不足や保管状態が悪いまま、ノーメンテでいると、
「クラッチペダルを踏むとクラッチマスタシリンダから水芸のように液漏れ。」
という笑えない事態が待っています。
※当然べダルを踏んでもクラッチは切れません(笑)。ワタクシも一度やりました。
こういうパーツは、
「メンテナンスをすることが前提。」
なのですよ。
旧miniのクラッチマスターシリンダは部品自体は安いもんなのですが、取付位置の問題で非常に作業しずらいのです。
年式が新しくなってもたぶんこのパーツは昔のままです。
※旧miniは年式が新しくなるごとにエンジンルームがこちゃごちゃするので作業性がどんどん悪化します。
そんな 何年も改善されないような パーツでもいまだに普通に売られているのが古い英国車です。
「もう車なんてこれ以上進化しなくていいんじゃないか?」
という牧歌的な時代とかお国柄とか設計思想がワタクシは好きなのです。
片側だけキャリパーを組んで固着したピストンを抜く
手配しておいたメッシュホースを一本だけマスターシリンダに取付けます。
そして、固着したピストンを内包したキャリパー(今回は右側)をフロントフォークに取付けます。
マスターシリンダと接続したホースをキャリパーに接続します。
これで、固着したピストンを抜く環境が整ったわけです。
要するに、
ということです。
ピストンの固着判明からここまでで2.5時間くらい経っています。
ようやくピストンを抜く準備ができました。
これを繰り返します。
いわゆる「ブレーキのエア抜き作業。」って奴です。
コツをつかむと面白いように景気よく泡が出てきます。
コツがありますが、マスターシリンダーから泡が出てきて次第にブレーキレバーのタッチが固くなっていくのは結構面白いのでワタクシは好きな作業の一つです。
専用工具もある
車のブレーキシステムの場合、自分でブレーキペダルを踏んで、キャリパー側のブリーザーボルトを緩めるなんてのは神業です。
ゆえに、
エアコンプレッサーを使って負圧で回路内にブレーキフルードを満たすというツールが存在します。
これを使うと一人でも余裕でブレーキのエア抜き作業ができます。
ホントにあっさりエア抜き作業ができるので、逆に心配になる。
ロータスも旧FIAT500もこれでエア抜きした。
このツールを使えばバイクでもエア抜き作業は楽にできるのですが、
用意するのも面倒だしバイクの場合はそれほど配管も長くないので今回はじっくり手作業としゃれこみました。
で。
フロントブレーキ回路内に満たされたブレーキフルードが目論見通りめでたく固着したピストンを抜いてくれました。
とはいえ、
ので大変面倒なのですが。
当然、この時点で作業予定時刻はリミット近く 家族との約束事をないがしろにしているので視線が冷たいのですが 作業完了までぶっ続けで行うことにします。
作業工程も折り返しを大きく過ぎて後半戦というか第4クオーターに入っていますしねえ。
とはいえ、
記事的に長くなったので次回に続きます。
今回も絵面が地味なので美味しそうな画像を載せておきます。
当ブログで紹介したこともある「秋山食堂。」さんのメニューです。
いつ行っても一個くらい見たことないメニューがあって素敵♪
次回は、ブレーキホースの取回しとリアブレーキの清掃という地味な話になりそうです。
地味でも大事な作業記録なので一応書いておきます。
ちなみに・・
なんだかVT250のレストア記事はワタクシの同世代の ガンダム世代のいいオッサンたちに 人気な様で励ましのお便りが多いのでワタクシも図に乗っています。
ですが、今回はまとめは無しです。
なんもまとまってないし、着地もしてないので。
※記事書いてる時間もあんまりないので、いつも以上に散文的な記事になっていますが、本当にその通りです。スミマセン。
これからも応援するのだぞ、国民。