でもクリアランス計測について明記してるネット情報は多くありません。
計測方法によってはクリアランスが大きく違うこともあるのです。
そりゃいつまでたっても音が消えないわけですよ。
という話です。
当記事の目次
Z1エンジンのタペットクリアランスの既定値
一度きっちり調整して普通にオイル管理していれば数万キロは持つはずです。
でもクリアランスの計測方法はイマイチ明確ではありません。
タペット音というのはシリンダーヘッド付近から「カチカチ・・。」という連続音がすることです。
音が出てても普通に走ってる個体は結構多いです。
アイドリングでは音が出なくても高回転でははっきり聞こえたりします。
結構耳に付く音なんですよこれが。
すべての異音の類は悪い兆候の第一歩です。
とはいえ。
タペット音なんてのは多かれ少なかれ出るもんです。
機械が接触しながら動いてるんだから動作音が皆無な方が不自然です。
消音作用のある水冷ならまだしも空冷エンジンなら尚更です。
※逆に水冷ではっきりカチカチ聞こえるとヤバい気もしますが。
タペット音の原因は、
「カムとシムの間の隙間(クリアランス)が広い場合に起こりがち。」
です。
ゆえに、
タペットの音はタペットクリアランスを調整することで概ね消すことが可能です。
Z1系のエンジンの場合、
マニュアルではタペットクリアランスは0.05mmから0.10mmの間とされていて、
アウターシムという500円玉みたいな鉄の板を入れ換えることで調整します。
隙間をシックネスゲージで計測して、必要に応じて適当な厚さのシムに入れ換えます。
慣れれば意外と簡単ですがシム交換作業の際は「シム交換用の専用工具。」が必要です。
シム交換用工具。
無いとシム抜けない。
安い奴もあったけれど今売ってないね。
使う頻度は低いけれど結構高い。
アウターシムは2.00mmから3.20mmまで、0.05mm刻みで用意されていて、
今でも純正、社外品ともに普通に入手可能ですが一枚余裕で1000円以上します。
Z1系のタペット調整は厚さと数で勝負的なところがあるのでストックは無駄ではないのです。
※しかも値上がり率がくそ高い。
前は800円くらいだった。
Z1系バイクに長く乗ってる人はアウターシムの各種サイズのストックを持ってたりします。
自分でタペットの調整をした経験のある人は意外と多いのです。
10枚以上持ってる人は調整で迷走した経験のある人ですね。
※こういう人とは話が弾むのですよ。
アウターシムはまともなエンジンならほとんど劣化しないので中古パーツでも取引されたりもします。
稀にネットオークションにアウターシムセットが出品されることがあります。
Zブームに乗ってか、それなりに需要があるようで高価格で取引されています。
※当倶楽部には各サイズのアウターシムのストックが全部で20枚くらいあるので売ろうかな(´;ω;`)
結構持ってるのは長くZ1系に乗ってる証拠です。
Z1系エンジンのいいところは、
バルブが8個しかない上、アウターシムなので素人でも 頑張れば 組める所ですな。
※他社の16バルブのクリアランス調整とか後継のJ系のインナーシムでは気が遠くなりそうです。
これらを踏まえたうえで。
タペット調整をするにあたり最初にタペットクリアランスの隙間を計測するわけですが、
「カムがどういう状態のときに0.05mmから0.10mmの隙間があればいいのか。」
が問題になります。
これが意外と人によって違うんですよ、計測の仕方が。
ワタクシはタペット調整をする際、いつも決まった方法でやっていました。
しっかり計測して、しっかりシムの厚さを調整して、クリアランスを適度に保ってきたつもりでした。
が。
カムチェーンガイド破損でシリンダーヘッドを下ろしたころから、なんとなくタペット音が消えなくなったのです。
今回これを解決できたのは
「タペットクリアランスの計測方法に問題があったから。」
でした。
目からうろこが駄々洩れするくらいの衝撃があったので計測方法の記事を書こうと思ったわけです。
※数十年来の「間違ってないハズ!」という思い込みって怖いですな。
ちなみに・・
ヘッドからのカチカチ音の原因はタペット音だけじゃないですよ。
もちろん、
いずれも原因を特定しないと解消しません。
でも、
変な思い込みや勘違い、現状把握のミスがあると原因特定を間違えがちです。
名探偵コナンのように「真実はいつも一つ。」とは限らないし。
※複合作用で音が発生してることも多々あるのです。
この辺がメカいじりの面白い所でもあり、辛い所でもあるのです。
※こういうのを解決した時は爽快なのです♪
カム山の一番低い所で見る方法
割と一般的(?)なのかネットで見る限りこの方向で計測してる人もいますな。
Z2のマニュアルにはこのやり方も書いてあります。
カムシャフトにはカム山がありますな。
カム山の凸部でシムを押してバルブを開いています。
ゆえに。
「カム山の凸部の180度反対側、一番シムから遠い箇所でクリアランスを計測。」
するのが間違いないだろうという考え方です。
ただし、
8個のバルブ全部で完全にカム山の凸部の180度逆に合わせるのは至難の技です。
なので、
「大体これくらいでいいだろ?」
という大雑把な計測方法でもあります。
ゆえに、
ワタクシはだいぶ前に卒業した方法です。
ちなみに・・
シリンダーヘッドカバーを開けてカムを回す場合、面倒くさがらずにプラグを外したほうが楽です。
シリンダー内の圧縮が抜けるのでクランクを回しやすいからです。
※クランクを回すためのポイントカバー内の17mmナットを回しやすい、の意味。
この17㎜ナットは舐めると大変なのですが、
自分で調整している人は大抵ここが多少舐めてますな(笑)
名誉の負傷とでも言いましょうか。
※ナットの素材が柔らかいのかもしれませんが、このナットはプラグを外さずに回すと舐めやすいです。
ピストンの上死点で見る方法
この方法が一番問題がないし理屈的にあってると思ってました。
でもマニュアルには書いてないのです。
クランクをタイミングマークの1/4Tに合わせて上死点を出します。
この時、
半分のバルブのタペットクリアランスを計測できます。
※目安は4番シリンダのINとOUTのカムシャフトの凸部が外向き状態。
この時、
のタペットクリアランスが計測できます。
もう一回転させて、
再度クランクをタイミングマークの1/4Tに合わせて上死点を出します。
ここで残りの半分のバルブのタペットクリアランスを計測できます。
※目安は4番シリンダのINとOUTのカムシャフトの凸部が内向き状態。
この時、
のタペットクリアランスが計測できます。
この方法なら一遍に4つずつのタペットクリアランスを計測可能です。
計測が楽で手間が少ない♪
実際、ワタクシもこの方法で長らくやってましたし、
ネットでもこの計測方法を紹介している人は多いです。
当倶楽部のZ1-Rはタペット音がイマイチ消え切らなかったので、
なんどもこの方法でタペットクリアランスをしっかり計測、シムの厚さを調整して既定値内に収めたはずでした。
が。
やっぱりタペット音が消えないんですよ(´;ω;`)
タペットクリアランスがあってるとすれば・・。
いろんなことが脳裏を回り迷走していたのでした。
そんなとき、
メンテナンスの師匠が梅雨の合間のわずかな晴れ間を縫うように長野ツーリングに来た際に当倶楽部ガレージに立ち寄ってくれまして。
その際、アドバイスを頂いたのでした。
※Z1000Mk2にキャンプ道具と修理工具積んで3日で1000km以上(下道)走る人を久々に見た。今にも雨降りそうなのに(笑)
それは、
タペットクリアランスを上死点で計測する方法ではなかったのでした。
ちなみに・・
当倶楽部のZ1-Rは大昔(と言っても20年くらい前)にエンジンばらした時も上死点でタペットクリアランスの調整をやってます。
それから最近までタペット音なんて出たことなかったのです。
2022年にカムチェーンガイドを破損してシリンダヘッドを下ろして修理してからタペット音が気になるようになりました。
ところが。
白煙対策としてZ1-Rと同じタイミングでシリンダーヘッドを外しバルブシールを交換したZ750D1では、
この方法でタペットクリアランスを計測してシムを調整したのにタペット音はほぼ出てません。
Z750D1はカムチェーン音の方が目立つくらいです。
※気にするレベルではないですが。
「個体差。」という奴なのかもしれませんがイマイチ納得いかないのも事実です。
なんでなんだろ?
もちろん、エンジン冷間時にやってますよ。
※エンジンが熱い時は触る気しないし。
カムスプロケの合わせマークで見る方法
「カムシャフトについてるカムスプロケには合わせ位置の刻印があるはずなので、それに合わせろ。」
というアドバイスをいただきました。
※「そこまで言うならやってよ。」と思ったけれどパンチされるので言えませんでした。
で。
シリンダーヘッドカバーを開けて見たところ。
「ホントにカムスプロケに合わせ位置のマークがある♪」
30年以上乗ってる上、エンジン3回くらいばらしてるのにカムスプロケのマークは初めて知りました♪
IN/OUTともある。
各々180度回して2カ所ずつ計測する。
Z乗りでは常識なのかもしれませんが、
この手の測定方法を記載をしているネット情報は見たことないです。
が。
Z750D1のサービスマニュアルには、
「カムスプロケットの"-"マークをシリンダーヘッドの合わせ面に一致させてバルブクリアランスを測定する。」
とシッカリ書いてあるじゃん。
赤枠内がそう。
常用しているZ2用のマニュアルには、
「カムのリフト部をタペットの反対側に向け、タペットとカムシャフトのクリアランスをシックネスゲージで計測します。」
とある。
※前述した「カム山の一番低い所で見る。」方式です。
が。
さらによく読むと、
「カムスプロケットにクリアランス点検用の合わせマークがある場合には、
マークをシリンダーヘッドカバーの合わせ面に合わせてから測定してください。」
とある。
※Z2やZ1などの古いZ1系エンジンには「カムスプロケに"-"がない場合もある。」ってことですな。
赤枠と青枠ないがそう。
良く読め。ワタクシ。
この方式で計測するとカムの位置が上死点方式とはちょっとズレますので、
上死点方式とカムスプロケマーク方式ではタペットクリアランスの実測値は異なるというわけです。
計測方法で0.05mmくらい平気で違う個所がある
そんなことよく知ってたな
せっかくなので上死点方式とカムスプロケマーク方式の両方で実測して見ました。
※字が汚いのは汚れた手で書いてるからです。
まあこんなもんだろ。
※しつこいようですが汚れた手で書いています。
同じシムでこれだけ差がある。
普通に0.05mm違う個所がありますな。
そりゃ音も出るってもんです。
ここが原因でしょうねえ。
経験上、冷間時で0.12mmくらいでもそれほど音は出ません。
実際にそれくらいで走ってる車体は多いし、冷間時のクリアランスはそれくらいでも多少熱で膨張するのでクリアランスは詰まり気味になるハズですし。
が。
クリアランスが0.15mm以上に広がるとなれば話は別です。
全部のクリアランスを計測した結果、
規定を大きく外れていた箇所が2か所ありました。
※0.12mmまではセーフとした。
4番のOUT側のタペットクリアランスは、
1番のOUT側のタペットクリアランスは、
という計測値になりました。
両方とも2回計測したので恐らく間違いないです。
というわけで。
※これくらいなら許容範囲です。OUT側は熱持つのでさらに0.05mm厚いシムを使って0.06mmになるよりマシ、という判断です。
再度、
を取り付けてエンジンを始動したところ・・。
今まで発生していたタペット音が9割消えました♪
まだ薄ーく音がしてる気もしますが今までよりは全然マシです。
ガッツリ走り込んでエンジンが熱くなったら音が消えるのはよくあることなのでこれで良しとします。
ちなみに・・
Z1系のアウターシムには厚さの数値がプリントされています。
2.40mmなら240、みたいな感じで。
※ワタクシがストックしてるアウターシムには社外品もある様で厚さ表記のフォントはまちまちです。
でも実測すると表記とちょっと違うのです。
シムをヘッドにセットする際はこのプリントをバルブ側にセットします。
※カム側にセットするとカムがシムを押す際にプリントを消しちゃうので以降の調整時に面倒だから。
とはいえ、
厚さの表記が消えかかってるものもある。
ゆえに。
プリントされた厚さは目安として、一応マイクロゲージで厚さを計測してから実装するようにしています。
まあそれほど大きくずれていることはないのですが表記より0.02mmから0.03mm程度薄い様です。
※新品時でもそうです。
右のは年期入っていますが使えます。
当倶楽部のガレージには ほとんどこの時しか使わない特殊工具なのですが マイクロゲージがなぜか二個あります。
二個のマイクロゲージで何枚かシムの厚さを計測した結果、
計測値は同じなのでやっぱりシムの厚さは表記より0.02から0.03mm程度薄いようです。
シムの厚さ表記と実測値が違ってもタペットクリアランスが0.05から0.10mmであればいいんで問題はないんですが。
まとめ
それぞれの計測の仕方で0.05mmくらい平気で違う個所もあるということがわかりました。
タペットクリアランスは計測方法によって平気で0.05mmくらい違うこともあるのですな。
今回もまたいい勉強になりました。
経験上、当倶楽部のZ1-RとZ750D1では0.15mmを超えるとわかりやすくタペット音が出ます。
今まで上死点方式でタペットクリアランスを計測していましたが、
マニュアル通りのカムスプロケット方式だと規定の0.15mmを超えることがあるのです。
シッカリ組んだと思っていても音が消えない。
直接の原因も分からないし、何が起こってるんだかわからない。
こういう時は迷走しがちです。
カムシャフトの組み方が悪かったのかもしれないと思ってカムを組みなおしてみたり。
何度もタペットクリアランスを計測し直してシムを変更して見たり。
解決するまでジタバタしましたが確実にワタクシの経験になりました。
なにより、
Z2用のマニュアルにもZ750D1用のマニュアルにも
「タペットクリアランスはカムスプロケのマークを合わせて計測しろ。」
と明記してあったのです。
今回のタペット音の原因についてワタクシの野生の勘が、
「タペット音の発生原因は2番か3番のOUT側がおかしいのでは?」
と根拠なく思っていましたが、
おかしかったのはワタクシの野生の勘のほうだったのです。
※なんとなく音の発生源がその辺じゃないかと思ってたのですがタペットの音の発生位置を特定するのは難しいということも分かりました。
今回、
「野生の勘は大抵外れる。」
ということも立証されたのでした。
経験になったとはいえ、迷走した期間はホントに無駄でした。
これからは迷走した際にはZ2用とZ750D1用の2種類のマニュアルを読み込もうと思いました。
※Z2用とZ750D1用のマニュアルでは記載内容が微妙に違うのは知ってましたが。
というわけで。
無事解決したので超嬉しい♪
タペット音にしばらく悩まされていたので解消した時は小躍りするくらいうれしかったです。
※タイミングよく遊びに来た神奈川のM君に近所のお祭りで生ビール奢っちゃうくらいの浮かれよう。
ついでに、
オイル交換してついでに奮発して添加剤入れてやろうと思います。