セロー250やSR400などの歴史のあるバイクの生産終了が続くと数年前のバイクの大量絶滅時代を思い出します。
※ラインナップが半分以下になった感じです。
今後もバイクの生産終了は続く気がします。
特に250cc以上の空冷多気筒バイクの新車販売存続は極めて厳しいです。
まもなく空冷エンジンって何?って時代が来るかもしれません。
当記事の目次
かつて空冷4気筒エンジンで世界を制した日本
冷却フィンがエンジンに付帯してるデザインは絵になるんですよ。
※特に多気筒空冷エンジンは大迫力です。
特に日本のバイク乗りは「空冷4気筒エンジン搭載バイク」をもう少しありがたがらなければなりませんよ。
このエンジンで日本のバイクは世界を制しました。
並みいる競合メーカーは4気筒化について行けず、長らく日本のメーカーが世界のレースシーンを席巻していたのですよ。
※次第に水冷化していきますが、世界戦略機としてまず空冷4発が世界中に輸出されました。
今更歴史を語るつもりはないですが、CBもZもGSもXJもこの時代から始まっています。
世界最大の市場であった米国でも日本製空冷4気筒が市民権を得ていきます。
ジョン&パンチ
ジョン&パンチは米国のハイウェイポリスの話なのに日本のZ1系バイクが大活躍します。
Z1系以外でも当然のように空冷バイクばっかり出てきます。
バイクに限らず、車マニアも絶対見ると楽しい海外ドラマです。
※出てくる脇役の車とかが超素敵。2stは白煙吹きまくり。今なら怒られるレベル。
初期のRX-7とかフェアレディとかアコード初期型とか、いちいちグッとくる。
日本人が憧れた豊かな米国の姿そのままです。
アメ車が軒並みデカイ。
トップガンもGPZ900Rじゃなきゃ流行んなかったよね。
そして
「米国の警察官はこんなに遊んでばっかしでいいのか?」
と思ったりします。
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AMAスーパーバイク
空冷4気筒バイクはレースの世界で大活躍です。
※世界を獲りに行ったので当然と言えば当然ですが。
当時のレーサーはダートトラッカー上がりなのかタイヤが滑ってもフレームがよれても気にしてないところが凄い。
※この手の動画も探して絶対見るべき。あんな乗り方絶対できないわ。
レース後インタビューを受けるフレディが超子供です。
特に、
現在大人気の空冷4気筒旧車が好きな人は当時の動画を探してみると楽しいです。
今人気の空冷バイクがしのぎを削ってて、見てて盛り上がること請け合いです。
※あんまりメジャーではないけれどフレディ・スペンサーのKAWASAKI所属のZ1000Mk2時代(ほぼ子供だ)の走りもスゲエ。
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ワタクシは空冷4気筒エンジンが「ジャパニーズスタンダードなバイク用エンジン」じゃないかと思うのですよ。
確かに大きく重たいエンジンなのですが・・性能的には40年くらい前のバイクで十分すぎる気もします。
※Z1のエンジンなんて単体で見てもバイクのエンジンとは思えないくらいでかいです。
性能や重さはともかく、
堂々とした見てくれと世界一を狙う意気込みがムンムンしてる各社のフラッグシップモデルは今見ても魅力的です。
ちなみに・・
当時のバイクは現在流通価格はどれもおかしい位高騰しています。
その価格に見合う価値は有るか無いかでいえば微妙です。
歴史的価値は有るかもしれませんが普通にツーリングできるレベルに初期化するまで数十万はかかる気もします。
※盆栽とか資産投資目的のバイクも増えてるんでしょうねえ。
今後はそういうバイクを欲しがってる人たちに一通り行きわたっちゃったら、買う人がいなくなるので価格が下がるか、海外に流出しちゃうかどちらかですな・・
※古いバイクに大金出すって人は、少ないバイク人口のなかのさらにほんの一握りです。
バイクはエンジンもデザインの一部
この見てくれの美しさで空冷エンジンのファンはいまだに多いです。
たとえエンジンの一部が冷えなかったとしても格好良ければいいのです。
やはり絵になるバイクと言うのはそれ自体が性能です。
格好悪いバイクはどんなに高性能でも「コレヂャナイ。」感をぬぐえません。
カウルでエンジン隠せちゃうならまだいいんですが。
カウルがないバイクは「やはり空冷の穂が絵になるよなぁ。」と思います。
ワタクシにとって空冷エンジンのフィンの造詣自体が感性に訴えるというか「ザ・エンジン。」なイメージんですよ。
一応熱対策したよ、という割と最近のエンジン。それでも20年前だね。
そして多気筒の空冷エンジンは物理的なレイアウト上、冷えないシリンダーが出てきちゃうのです。
※カウルなんかついてりゃ余計冷えません。
車の空冷は絶滅した
エンジンが外から見えず、構造上冷却を送風に頼れない車は早い時期に絶滅しました。
※強制空冷ファン付けたりして頑張っていましたが。
空冷ポルシェなんてほぼ最終期の空冷エンジン搭載の車です。
涙ぐましい努力でリアに積んであるデカい高性能空冷エンジンを冷やそうとしています。
年式が新しいほどデカいオイルクーラーを積んでいます。
※リアのエンジンから車の前方までオイルラインを引いてるのでオイルラインが超長い。
ポルシェの空冷エンジンのオイル量は半端ではありません。
※一時期本気で欲しかったですが中古相場が高騰しまくりです。もう買えないわ・・
これはビートルのエンジン
旧FIAT500も空冷エンジンです。
100円均一とか夜店のお祭りで売ってるようなチャチな冷却ファンがついています。
コレが金属板同士の接合が甘くて崩壊するのよ・・
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ちなみに・・
ワタクシは水冷エンジン自体の外観デザインがちょっと苦手です。
確かに、のっぺりしてるので掃除はしやすい。
でもエンジンの存在感が薄いというか・・
エンジン部分にぽっかり存在感がない気がします。
※メーカーはエンジンにフィンみたいな模様付けて誤魔化したりしますが。
それに、
水冷のラジエターはイマイチデザイン的に邪魔な気もします。
水冷エンジンは、ラジエターが必須なのである程度バイクのデザインの自由度を制限されますね。
※それでもラジエターのコアを分割したり涙ぐましい努力で搭載しているモデルもありますが。
ワタクシはバイクは空冷エンジンで十分じゃないかと思うんですよ。
空冷エンジンのメリット
これに尽きます。
水冷エンジンは水流を発生させるポンプや制限させるサーモスタットなどのパーツが必要です。
※エンジンの外側を水路が回ってるので構造が複雑です。
空冷エンジンのメリットは水冷に比べてあんまり多くないのですよ。
と言ったところですかね。
メンテナンスしやすいのも魅力ではあります。
特に、
長期的に維持することを考えれば余計なものがついていないというメリットは見た目並みに大きいです。
※エンジン内部の冷却水関係のトラブルは本気で面倒くさいのですよ。
ちなみに・・
水冷エンジンの人は冷却水を交換してますか?
オイルは交換するのに、エンジン冷却水のLLC(ロングライフクーラント)は交換したことない人も多いはずです。
※安心してください、5年単位で交換してない人なんてザラにいます。
冷却水は基本的に減るものではないのですがね・・
水路には結構歯石みたいなゴミとか水路の水垢が溜まったり、錆などの酸化が進んでたりするのです。
ゴミや錆がラジエターの細い水路に入り込むと流量が確保できず本来の水温を保てません。
こういう事態を避けるためにも適当に冷却水は交換すべきですよ。
※もちろんエンジンを分解清掃しないと水路のゴミは完全には取れません。ラジエターはヘタすれば交換です。
エンジン内部に「水路がない」空冷エンジンには水系のトラブルは発生しようがないという
「シンプルな構造的メリットがある。」
のです。
空冷エンジンのデメリット
とはいえ、
水冷に比べればと言うレベルでいろんな点で劣ってるのは確かです。
空冷エンジンはオイル量とオイルの鮮度がシビア・・かと思いましたが意外とそんなこともないです。
むしろ、
現代の超ハイパワー水冷エンジンの方がオイルに関しては厳しいです。
※特に古い設計の空冷エンジンはあんまりいいオイルは入れないほうが吉。柔らかいオイルもダメです。
空冷=オイルで冷却と思っていいです。
空冷エンジンの究極はいろんな意見がありますが「SUZUKIの油冷エンジン」でしょうねえ。
空冷エンジンの進化型高回転高圧縮ハイパワーの「SUZUKIの油冷エンジン」は涙ぐましい努力でエンジン温度を下げる工夫をしています。
※ピストンの裏にオイルを噴射して冷却効果を上げてる。スゲエ。
SUZUKIってたまに素晴らしく良いもの作るけど、惜しいデザインが多いのも事実ですね。
※いまだに引きづってる「刀の呪い」もありますしねえ。
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ちなみに・・
空冷エンジンはオイル量が多めです。
冷却を空気に頼っているとはいえ、空冷エンジンはオイル量を増やしてエンジン温度を下げるのはセオリーです。
※古い空冷の車はチューニングパーツとして「増量オイルパン」は普通です。
Z1系エンジンは純正だと3.7lのオイル容量を誇ります。
これって普通自動車並みオイル量です。
※オイルクーラーつけるなら+300ccくらいは多めの方がいいです。
オイルがエンジンつなぎ目から滲んだりオイルのが早い場合は、硬めのオイルにしてやると多少マシになることもあります。
空冷エンジンは安定しない
とはいえ、
空冷エンジンはエンジン回りの温度を保つことが苦手だと覚えてきましょう。
真夏のくそ暑い陽気で乗るとオーバーヒート気味になります。
ただでさえ気温が高くガソリンの気化率が高いうえ、さらにエンジンで熱せられるガソリンはガンガン気化します。
そうなると濃い目のセッティングになります。
※キャブの中でガソリンが沸騰します。パーコレーションと言います。
「濃いなら薄くすりゃいいだろ。」
と、やみくもにセッティングを薄い方向にいじるとですね。
ガソリンの気化熱での冷却が出来ず、余計エンジン温度は上がったりするのですよ。
※真夏の空冷エンジンに油温計なんて絶対つけないほうがいいです。油温が天ぷらが普通に揚がる温度になります。
冷間時はその逆です。
という具合に、
「空冷エンジンはガソリンの混合に適した適当にいい感じの温度に保ちづらい。」
と言うデメリットがあります。
こういうのこそセンサーで調整すればいいのでしょうがねえ。
今どきの水冷エンジンに搭載されている電子デバイスは気温も湿度も気圧もコントロールしてるのでしょうか?
※本気で暇なら、インジェクターとそのセンサーを取り寄せて・・とか思いますが面倒なので止めます。
田舎に引っ越して本当に良かった・・
空冷のでかいバイクでアイドリングで長い時間暖気する人がいますが、オーバーヒートしますよ。
※気温35度くらいある真夏に、リッタークラスの空冷バイクで5分もアイドリングして動かなければ確実にオーバーヒートリーチです。
「空冷エンジンは動いてるからこそ、冷却されるのであって走ってない限り、熱を発散できない構造です。」
※渋滞時はエンジン止めるのも手です。
ちなみに・・
当倶楽部の2stオフ車軍団は全部水冷です。
特に外気に思いっきり影響を受ける2stは水冷の方が乗りやすいのは確かです。
※空冷2stの機構の簡単さは捨てがたいのですが。AR50シリーズや古いベスパとかそうです。
DT200WRは、キャブの周りに水を回してまで安定した気化を確保しています。
安定と引き換えに、キャブやエンジンをばらす際、いちいち水抜くのが面倒くさいです。
※最近はキャブの清掃くらいなら、水を抜かずに作業する方法を確立しましたが。
小排気量の小型エンジンの冷却水路はパッキン一枚が水とオイルの隔壁になってるようなギリギリの設計も多いです。
当然、パッキン部が痛むと水と油が混ざります。
こうなると、
オイルに水が混じり、水にオイルが混じり、大変なことになります。
具体的には、
オイルに水が混じって撹拌され乳化するとクリームのように変質します。
当然性能は出ませんし、そのまま放置するとエンジンが壊れます。
そしてエンジンの分解清掃とオーバーホールになります。
空冷エンジンは重くなりがち
ところが。
今の技術は水冷の方がはるかに小さく軽く出来るらしいのです。
空冷エンジンの特徴は何といっても「フィン」ですよね。
コレが格好良さにつながってるのですが・・
実はフィンは金属の塊でとても重いのですよ。
空冷エンジンはある程度の大きさと質量がないと放熱しきれないのです。
要するに、
「量を増して蓄熱&放熱する仕組み」
「デカイヒートシンク。」
みたいなもんです。
特に高回転高圧縮型エンジンは発熱量が大きいので熱的に苦しい。
一時期は全国産メーカーは空冷でこれをやろうとしてたわけで、今思うとちょっと無理があったね。
※逆に、低圧縮でロングストロークの低回転型エンジンなら空冷の冷却でも問題ないように思えます。
また、
空冷エンジンは金属は熱膨張を考慮した おおらかな 設計になっています。
なのでエンジンは余計に大きくなりがちです。
驚いたことに現代の技術は、
水冷ユニットや冷却水を追加しても、同じ性能を出すならば今どきのエンジンは空冷にするよりも水冷にした方が軽く小さく出来るらしいんですよ。
ちなみに・・
空冷エンジンは動作音が騒々しいエンジンでもあります。
水冷は水が振動や打刻音を多少緩和してくれるようなのですよ。
※巧妙なコンマ数ミリ単位の設計が優秀なんでしょうが。
水冷の方が何となく重低音というか「こもったエンジン音(排気音も含む)」になるように思えます。
水冷でもエキマニの取り回しなんかの造詣は芸術的なんですけどねえ。
動作音はどうやってもちょっとうるさくなりがちです。
※旧車はカムチェーンが伸び気味&テンショナーが上手く動作してないなどの複合的な理由もありますが。
分厚い冷却機能を持ったエンジンのシリンダー部を伝わってエンジン内部の音が伝わるのですよ。
ワタクシは、この騒がしい音が好きだったりします。
※「ああ、エンジンが動いてる。内部でガソリン爆発してる。」って感じが好きです。
時代の流れで騒々しいエンジンは世の中に受け入れられなくなっています。
作動音が少ないモーターのようなエンジンもいいんですけどね。
まとめ
それでも、
バイクと言う趣味の要素が大きい乗りものは「見た目」が大事です。
絶対的な性能差は埋められませんが、公道で使う分には各々の性能差は誤差レベルです。
エンジン前部にラジエターを持たない美しい空冷エンジン搭載バイクを手に入れるなら、今が本当に最終時期なのかもしれません。
今のうちに空冷エンジンを経験しておくのは大いにありです。
※似たような理由で消えていった2stバイクはもうすでに最終時期を過ぎた気配すらありますね・・
「この後、確実に消えていくであろう空冷エンジン搭載車に乗れるうちに乗っておけ。」
と思うのですが・・
コレだけ中古価格が高騰してたら「いらねえや。」と思うのがマトモな神経の持ち主です。
※ただ、バイク乗りは 馬鹿 こだわる人が多いので空冷を神格化しちゃうかもしれませんね。
セロー250Iとかそういう車種が出ても多分空冷じゃないよね。
逆に、
今買える大型空冷バイクはほんっとに最後だと思ってた方がいいですよ。
※あえて車種名は書きませんが。いつ販売終了になってもおかしくないです。
恐らく、今後250cc以上の【空冷エンジン搭載バイク】は増えることはほとんどないハズですよ。
ちなみに・・
性能が控えめとはいえ、公道でツーリングする程度なら空冷エンジンでもそれほど神経質になる必要はないです。
むしろ、一般人が楽しむのには十分な性能だと思います。
昨今は何でもかんでもインジェクション化だの環境対応だのと旧来の技術を締め出してまで新しいモノを売ろうという意向が見られて不快です。
今まであったものを完全否定するのは「老人はみんな死ね。」と言って排除しているようなものです。
※今声高に排除を叫んでる人も、いずれ自分がその排除される側に回ります。
むしろ、
趣味の世界なんだし今あるものを徹底的に大事にしてもいいように思います。
排出ガスの問題の話をする人がいますが、まだ動くものを廃棄してまで新しく作るものに変えることが排出ガスの軽減につながるなんて本気で思ってるとしたら、かなり勉強不足です。
※プラや樹脂の製造工程は排出ガスだらけです。
なので。
バイクなんてのは既に存在している車種をレストアしながらチマチマ乗るくらいでちょうどいいんですよ。
「空冷バイクをレストアする。」
というのが世の中のムーブメントになったりしないかね?
※「ものつくり日本」はこういうところから始まる気がします。